それはまるで陽射しのように【sideレフティア】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:テオさん
 
 
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 見事なまでの敗北だった。どちらともが全力で、ただ一つのこのバトルの時間に夢中になった。そう、確かにこの一時だけはこの場のものにとっての大切な時だったのだ。
 氷結晶が砕け散るかのように目の前には美しい煌めきが舞った。全力を尽くしてくれたロスカを労わるように駆け寄ったレフティアの方に、テオもやってくる。どこか不満気にそっぽを向いてしまったロスカの態度にはレフティアも苦笑したが、それはテオも同じだった。
 そして何より、テオに手を伸ばす理由がレフティアには出来てしまった。彼の反応からして彼自身無意識だったのだろう。頬を伝う雫が、何なのかなんて赤子でもわかってしまう。雫を拭えば、その手に彼の手を重ねられる。冬の寒さで厳しいフィンブルではあるが、確かにその手はあたたかかった。 
 
「……もう、大丈夫だよ」
 
 レフティアにはテオがどうしてあのような表情を浮かべていたのかも、不意に涙を流したのかもわからない。それを彼に聞くことは野暮だと思えたし、彼が話したいと思った時に力になれたらいいと思えた。だからこそバトルが終わるまで、あえて聞かずにいた。
 重ねられた手の下で手をくるりと回転させて、テオの手をそっと握りしめた。大きな男性の手。レフティアの指の先はどうしたって彼の指先には届かない。
 けれども。
 
「テオさま」
「うん」
 
 名を呼んだ。目の前にいるのが確かにその人であることを確かめるかのように。自らが問いかける人がその人であることを確かめるように。声を聞きたい人が、その人であることを確かめるかのように。
  
”バトルが終わったら、伝えたいことがあるんだ”
 
 確かに彼はバトルが始まる前にそう言った。レフティアはテオの瞳を見据えたまま、ゆっくりと問いかけた。
 
「わたくしでよければ、お話を聞かせてもらえますか?」
 
 彼が話しやすいようにと、普段通りの柔らかな口調で微笑みを浮かべて。

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