はじめのいっぽ【sideフォカロル・グリモア】

こちらの流れをお借りしています。
  
■お借りしました:ラヴィーネちゃん、レーニアくん
 
 
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 全ての力を出し切ったと言わんばかりに崩れ落ちたレーニアの姿に、送る言葉は決まりきっていた。
 
『よきものを見せてもらった。君たちのこれからが、楽しみになったよ』
 
 トレーナーもポケモンも、互いを疑うことなく信じて立ち向かい続けた。その在り方、有り様は彼等が生み出した氷のように。いいや、____氷の煌めきよりも美しく眩いものだった。
 崩れ落ちたレーニアを労わるようにラヴィーネは彼の背中を撫でる。それに応じる彼の瞳も表情も、なんとまあ。うつくしいものか。
 
 回復を行うためにグリモアは彼女にチップを渡してすぐに私の傍にやってきた。いつも通りの無表情ではあるが、それでもこの子が先ほどようやっと微笑みを浮かべたのを私は見た。
 彼等には感謝をしてもし足りない。私はこの子を守ることは出来ても、愛を与えることは出来ても、この子の変化にはなれやしなかった。だからせめてこれ以上壊れてしまわないようにと傍にいると決めて、この子に変化を与えてくれる者たちを待っていた。
 凍てついた、白い世界を壊してくれる者たちを。
 
 無表情で私を見遣るグリモアの頬を、そっと撫でるように顔を擦り寄らせた。
 
 
***
 
 
 俯いたラヴィーネからフィンブルタウンに寄ってほしい、と告げられてグリモアは不思議に思った。先までは真っ直ぐにバトル相手のこちらを見据えていたというのに、今は俯いてしまっている。けれども先程ラヴィーネは確かに微笑んでいたから、拒絶の負の感情を向けられているようにも思えない。
 旅をしているかと言われればイエスだ。父親の家族を探すという、グリモアにとっては何の意味もない旅。彼女が住んでいるフィンブルタウンという街もコランダの街の一つなのであれば自ずと訪れる場所だろう。
 
「行くよ」
 
 何時になるかはわからないけれども、やがて向かうべき場所だ。グリモアはフォカロルを撫でながらこくりと頷く。
 それに、と。ほんの僅かに父親と母親の願い以外で、生まれたものがあった。
 
「次は勝ちに」
 
 自分を守ってくれているフォカロルに頼るのではなくフォカロルが安心出来るようにか、それ以外の意もあるのか。それは、まだグリモアには分からない。
 けれども、立ち向かってくるトレーナーとポケモンの姿勢は不快ではなく。打ち破られたと同時、打ち破りたいとはじめて思ったのだった。

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