そして少女は落ちていく【sideリピス】
▼こちらの流れをお借りしています。
■お借りしました:スウィートくん
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本当に、最悪で最低な男だと思った。
まさかの言葉に思わず顔をあげれば、夕焼けと夜空の狭間で緩んだ表情が見えて。楽しげで意地の悪い、でも、苛立ちでもつまらなさそうでもない。はじめて見た彼の表情。
更に頬に熱が溜まって、脳が沸騰するような不快な感覚。わかっている、もう、わかってしまった。クッカ・ムナで名前を呼ばれた時は衝撃が強すぎてわからなかった。けれどもここまで来てしまったら、流石にはじめてのものだとしても理解してしまう。
切っ掛けは何だったかなんて、そんなの彼がわたしを試してくれた夏の一件に決まってる。あの時からわたしの中で彼の存在が変わった。いいや、はじめて彼に会って負けたことが悔しくて、それのせいで最初から執着はしていた。
ただの執着だった。それがどうしてこんな風に変化してしまうというのか。それも全て全て、この男のせいだ。
気付きたくなかった。知りたくもなかった。抱きたくもなかった。こんな男相手になんて。
恐ろしい程に情けなくて醜い、この感情はただの呪いだ。
愛憎は表裏一体だなんて、そんな言葉を本で見た時は馬鹿馬鹿しいと一蹴していたはずなのに。
ああ、嫌だ。本当に腹が立つ。
「……」
行先はダグシティにあるスウィートの家だと告げられて、手が緩く握り返される。それは痛くもないし、簡単に振り払えてしまう程の力の込め具合だ。やめるなら今のうちだと。この手を取るか選ぶのはわたし自身で選ぶものだと。
取るべきではない。彼が何をしているかを見てきていたのだから。元々、危険な行為を行う彼からは距離を取るべきだったのだ。
冷静な頭では十二分にわかっているのに、わたしの頭は狂った答えを弾き出す。
だってもう、気付いてしまったら戻れない。こんな甘い言葉から、逃れられない。
指先を絡めるように握り返せば、手の大きさの差が更に顕著になった。
「スウィートと、行く」
しっかりと彼の両目を見据えて、告げる。
早く夜の帳が完全に落ちきってくれたらいいのに。宝石のような瞳、色の異なるそれに映り込んでいるのだから、赤く染った頬になんてどうせ気付かれている。だから、少しだけでも隠したくて。
わたしはすぐに俯いてその手を握る指先に力を込めた。
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※この作品以降、リピスは執着と憎悪を含んだ恋愛感情をスウィートくんに抱くようになります。
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