エンカウント【sideテュッキュ・ロスカ】
▼こちらの流れをお借りしています。
■お借りしました:ルシオラくん
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留守番まじでつまんねえ。
預けられたポケモンセンターにはポケモン達は沢山いるが、バトルが許されている訳では無いし俺を甘やかしてくれるレフがいる訳でもない。更にレフ以外でも甘やかしてくれる手持ち達をどうして今回皆連れて行ったのかと。
悔しすぎて俺はロスカの頭の上にのってくそラプラスの頬を引っ張ることしか出来ない。そうしていたら振り落とされた。この乱暴者め!
『いってえ!このくそ野郎!』
『うるせえガキ。俺に触んな』
ほらこんなにも優しくない。甘さの欠けらも無いロスカに、何を考えているかわからないランタと俺。どう足掻いても楽しくない。なんだこの空間。まじでないと思いながら視線を反らせば、いやに意気込んでいるようなルシオラが目に入った。何してんだあいつ。
と思っていると不意にルシオラが楽しいことを俺に持ち掛けてきた。バトルの秘訣なんてもんあるのかどうかはこの際どうでもよく、単純にこの暇すぎる時間をなんとか出来ることに俺は喜びを見出してしまった。
まああと、あれだ。レフに褒められるのは嫌いじゃないからな。レフに抱きしめてもらうのも頭を撫でてもらうのも俺は好きだ。別に甘えん坊とかじゃそんなんじゃない。レフは可愛いし優しいから好きなだけだ。
『おう!行く!』
『よし!』
ルシオラが差し出した手を俺はしっかりと握りしめた。確かルシオラは手癖が悪い。勝手に誰かのものを盗むのは悪いことなんだとレフが言っていた。だからインタビューついでに俺が見張っていてやるんだ。流石にルシオラはレフみたいにすぐに迷子にはならないだろうけど、その点も考えて俺はぎゅっとルシオラの手を握りしめた。
ポケモンセンターの中は本当に沢山のポケモンがいた。フィンブルじゃあんまり見ないポケモンも沢山だ。
『どんな奴に声かけるんだ?』
『んー?そりゃあ強そうな奴とかだろ』
『強そうな奴っていうと、あいつとか?』
なんとなしに指差したのは、珍しい色違いのリザードンだった。あと何か格好いいアクセアリーもつけてるから純粋に目をひいたのだ。
『お、いいかも』
『それじゃあ』
『おい、クソガキ共』
ぐい、と首根っこが引っ張られた。何かと後ろを見れば、さっき俺を頭から降り落としたロスカが俺の首を咥えて引っ張っていた。滅多に普段動かないロスカが動いたことにも驚きだが、それよりも乱暴な扱いに苛立ちが勝る。
ロスカは俺の首根っこを咥えながら、ルシオラの身体も引っ張って無理矢理に方向転換させた。それに流石にルシオラも目をぱちくりさせている。
というかロスカの奴、レフの手持ち以外と話したのも接したのもこれが初めてなんじゃねえの。だってこいついつもボールに引きこもってるし、たまに外に出てきたと思えば誰も近寄らせようとしねえし。
『あっちにもっと強そうな奴らがいんだろ。あっち行け』
『は~!?』
『おわっ!?』
この周辺でガキにうろつかれると目障りなんだよ、なんて失礼極まりない台詞と共に俺とルシオラは色違いリザードンがいた方とは全くの反対方向へと放り投げられたのだった。
***
忘れる訳がない。あの時の痛みも怒りも苦しみも悲しみも。失ったものすらも。何もかもが記憶の片隅に憎悪の煮凝りとして染みついている。
楽しそうに俺の名誉も友も家族も。何もかもを奪ったくそ男に、その相棒の色違いのリザードン。
”ああ、それはいらんな”
色も通常だし強さもそこそこで毛並みもよろしくないのだと。
リザードンの背に乗りながら俺を見下ろしていたあの褐色男の瞳の色も、それに呼応して揺れるような橙色の炎も。何もかもを忘れていない。
『ロスカ』
『……んだよ』
『言われたいかい』
ガキ共を適当に放り投げてすぐに、ランタが俺の前に降りてきた。見透かすかのようにみてくるこいつの瞳はいつだって苦手だ。
何もかもの興が削がれた。俺は溜息をついて、先までいた場所まで戻る。この場にあのリザードンがいる理由はわからないが、どうせマシな理由じゃあない。早々にこの場を離れるか、あのリザードンを仕留めたい感情に支配されるがランタの瞳は酷く冷静だった。俺は弱くて、今でもあのリザードンには敵わないのだと諭してきたのだから。
俺を保護だとかいう名目で捕まえたあの女。褐色男にだけは遭うなよと思った。いなくなるなら、俺を自由にしてから俺の目の前でいなくなれというだけの話だ。
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