衝動には抗えない【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:アルスくん、イリスくん
 
 
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 これまでのあらすじ。悲鳴が聞こえたので慌てて反射でそちらに向かったら、コランダ地方のフェアリータイプの四天王だと認識している男性が人間洗濯機の状態になっていた。
 
 うずしおとサイコキネシスを人間に使うとああなるのね、なんて一種の感嘆すら抱いてしまいそうになりつつも、あれはあれで無事なのだろうかと不安に思ってしまう。思ってしまうが、周囲に沢山いる人たちが止めていないところを見る限り特に問題はないのだろうか。
 なんてことを思っていた時だ。わたしが駆けてきた際に人間洗濯機の様子を撮影していた男性がそっとわたしから距離をとっていることに気付く。腕章は同じレッドチーム。バトルが嫌で距離をとられた、とも思い難い。
 何かしてしまっただろうか、と不思議にそちらに視線を向ければ、ちょうどシンに手を振っていたピカチュウの姿に気付く。男性の腕に抱かれたその子はシンの反応にショックを受けたような表情をしていて、ああ、シンの無表情と態度に驚かせてしまったのだろうか。と、冷静なわたしの思考はそこまでは働いてくれた。働いてくれたのだが。
 
 今わたしの目の前にいるのは、ピカチュウなのだ。
 
「ねえ!」
「えっ!?」
 
 わたしは咄嗟に男性の方に手を伸ばして、腕を握りしめた。距離をとられかけていたことは理解はしていたが、それよりも何よりもわたしの興味はそちらに向かってしまったのだ。
 
「そ、その子、抱っこさせてもらえないかしら……?」
 
 ピカチュウが、ピカチュウ系列の顔をした可愛いポケモンが、わたしは大好きでたまらないのだ。けれどもあまり目にする機会は旅に出てから今までになく、少し残念に思っていたのだが今ようやく、こうして出会えた。
 若干怯えられているような気もしたが、それでもようやく巡り合えたチャンスを逃したくはない。わたしは懇願するように男性を見上げて、その際に自然と視界に映り込むピカチュウの可愛さにくらりとした。

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