しき【sideランタ】

■自キャラの独白です。


------------------------------------------------------------


 春の喜びを知らない。
 夏の明るさを知らない。
 秋のあたたかさを知らない。
 その子が知っているのは冬の恐ろしさだけだった。


 冬は嫌いだ。夏も嫌いだが、寒いよりかは全然いい。冬の寒さは何もかもを凍てつかせてしまうからこそ、好きじゃあない。
 けれども雪の白さは好きだ。白は何もかもを覆い隠してくれるからこそ、都合がいい。
 全て全て消えてしまえばいい。そう思ったからこそ彼女を唆した。
 ■■■が願ってさえくれれば我等は何だって叶えられる。■■■が望んでさえくれれば我等はunknownではなくなる。■■■が、■■■が、■■■が。我等の存在意義を決定する。
 だから我等は■■■の願いを叶えた。■■■の全てを消した。それでいい。それが最もよいことだから。
 しかしそれにより我等はunknownでありunknownでなくなった。我等は■■■が願ったことによりunknownではなくなったが、■■■の願いを叶えたことによりunknownと成り果てた。
 我等は、我は。一体何なのだろうか。

 我の名を呼ぶ声がする。我の名ではないが我の名であるそれを。我の名を知るのは■■■だけだ。だからこそ当然のことだ。それでいい。それが■■■にとって最もよいことなのだから。

『■■■』

 誰に分かるわけもない名を呼んだ。言葉が通じないからこそ呼ぶことが出来る。■■■は首を傾げてはいるが、ポケモンの声が人間には通じないのは当然のことだ。■■■は穏やかに微笑む。■■■が絶対にすることの出来なかった、しなかった表情。我等では与えられなかった、■■■の姿。
 だから、これでいい。
 ■■■のことは我等だけが記憶していればいい。■■■はもう消えていい。■■■を我等がどれだけ愛していようとも、■■■が我等のことを忘れてしまったとしても。■■■が幸せであればそれでいい。
 だから、■■■はレフティアでいい。

『レフティア』

 レフティアとなった彼女は我に手を伸ばす。それに誘われるように彼女の横に並べば、嬉しそうにレフティアは笑う。■■■が一度もしなかった表情を。
 我はそれを、何よりもの幸福に思う。


 春の喜びを知った。
 夏の明るさを知った。
 秋のあたたかさを知った。
 その子が知らないのは冬の恐ろしさだけだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?