しんかのきせきは輝かない【sideムム】
■自キャラだけの話です。
何もかもを覆い隠してしまうほどの眩い光に、なんて美しい光だと思った。
けれどもそれを美しいとだけ感じられないのは、きっとボクの心が狭いせい。
リピスはボクをアタッカーとしては採用しない。サポーターとしてバトルでは采配する。調査の時も、ノアトゥンジムでのジム戦の時だって、ボクはいつだってサポート要員だ。そりゃあそうだ。だってボクは攻撃よりかは補佐や回復が向いているのだから。
でも、でもさ。ボクだってポケモンだ。キミの手持ちだ。
ボクの補佐で、キミがスウィートを殴りに行った時。ボクは何よりも誰よりも悔しかった。戦うべきはボクじゃないか。それなのに、どうしてキミが身を呈して無理をするんだ。
嫌いだ。大嫌いだ。リピスなんて、本当に嫌いだ。
トトが倒れ込んで、リピスはその子を抱きしめに行った。リピスもトトもどちらも偉い。だってトトはボク達の見ていないところで一匹で特訓をしていたのだから。
野生ポケモンと戦って傷ついた彼を放っておけなくて回復のために声をかけた。
"何でそんなに特訓するのさ"
"マスターの泣き顔が見たくない"
"泣き顔が?"
"綺麗だけど、見ていて嫌だ。だから強くなってまもりたいと思ってる"
"………"
"……?何でそんな顔するんだ"
"え?"
"君も同じことを考えていたんだろう?"
最悪だ、と思った。こんな新参者にすら見抜かれていたなんて。指摘されるなんて。
ああ、そうだよ。ボクはリピスをまもってやりたい。義務としてなんかじゃあなく、純粋にボクを愛してくれる不器用なあの子をまもってあげたいと思っている。
でもボクじゃあ力が足りない。ボクに出来るのは攻撃の威力を弱めることか、傷ついた身体を癒すことぐらい。
リピスの求める強さも、リピスをまもるためのボクが求める強さだって持ち合わせていない。
リピスはやさしくトトを撫でる。立派な皇帝へと進化したその子を。
海ではササとルルが場を乗り切った。ジム戦ではゼブライカが力を見せた。
ボクは、何をしていた?
家を出る前、リピスに持たされたしんかのきせき。それが酷く酷く重くて苦しくて、どこかにでも投げ捨てたくて、仕方がなかった。
ボクだって、キミをまもれる程に強くなりたい。進化の奇跡を果たしたいのに。
本当に大嫌いなのはリピスじゃあない。求める強さを手に出来ない、ボクだ。
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