あたたかさとあまさと【sideガラド】
▼こちらの流れをお借りしています。
■お借りしました:ルーミィちゃん、ミィミくん
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あたたかな紅茶が冷えた手をあたためていく。それが物理的な面だけではなく、感情的な面でも効果を果たしているのは、ルーミィは気付いているのだろうか。思わず零れた笑顔は、酷く情けない程に蕩けたものになっていたに違いない。
新しく生まれた命。自分が、ルーミィに預けた卵。その出生が酷く嬉しくて、安堵した。彼女の元に生まれてきてくれたことも、喜ぶルーミィとミィミの姿もだ。俺だけでは作れなかった幸福の光景が目の前に広がる。
それがどうしても嬉しくて、泣きそうになった。
ルーミィの家へと向かおうと決めて、手を差し伸べば付き合いはじめて一年は経ったからか距離感に慣れてくれた彼女が腕に抱き着いてくれる。その姿が可愛くて愛おしくて、心が酷くあたたかくなる。好きだなあ、と思えば自然と彼女の方に身を寄せていた。
先程もらったばかりの黒色のマフラーのことを思い出す。きっと彼女の手作りだ。まだ寒いとは言い切れない気候とはいえ、俺が寒がりなこともわかって彼女はこれを贈ってくれたのだろうかとか、何を贈ろうか悩んでくれたのだろうかだとか、そんなことを考えるだけで嬉しくなってしまう。
折角彼女がくれたのだからと、歩きながらマフラーを取り出して首に巻いた。
「あっ」
「ん、あったかい」
あたたかい理由は絶対にそれだけではないのだけど。こちらを見つめてくる愛しい彼女におすそ分けだとばかりにマフラーを軽く巻き付けて、立ち止まる。自然と近くなった距離で赤らんだ頬がへにゃりと緩められるものだから、耐えられなくなって唇を重ねた。
視界の片隅でセイフが動いた気配がしたから、きっとミィミの目を手で覆い隠してくれたのだろう。先ほど俺がルーミィとミィミにされた目隠しのように。
「がっ、ガラドさん、外ですよ」
「マフラーで見えてへん見えてへん」
とはいえ、あれだけ接近すれば何をしていたかなんて傍からは一目瞭然だろう。衝動のままに動いてしまったが怒られたらどうしようか、嫌われたらどうしようか、なんて焦りも勿論生まれてくるのだが。
それでも目の前の真っ赤になってしまった彼女の可愛い表情が見れたのだから、まあしょうがないかとも思えてしまったのだから俺は相当に愚か者なんだろう。
こんな穏やかな日常が、ずっとずっと続けばいいのに。なんて。歩幅を彼女に合わせて、俺はあたたかな感覚に身を浸した。
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