少女たちのいやがらせ【sideササ・リピス】
▼こちらの流れをお借りしています。
■お借りしました:スウィートくん
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気持ち悪い。恐ろしい。お願いだから近寄らないで。
わたしに向けられた言葉はいつだってそんなものばかりだった。ポケモンからも人からも気味悪がられ、恐れられ、距離を取られる。
わたしはただこう在るだけなのに、誰も彼もがそんな態度をとるものだから慣れてしまった。そういうものだと受け入れてしまった。
だから距離をとられたって何とも思わない。だから陰口を叩かれても何とも思わない。だから攻撃を受けても何とも思わない。
思わないけど、やり返す分は単純にやり返す。たった、それだけのこと。
だから、わたしはきっとリピスの目に留まったのだろう。
だって当時のわたしは。リピスの手持ちに入る前のわたしは。間違いなく、リピスの当時の姿に酷似していたのだから。
リピスは不思議な子だ。おかしい、奇妙だと言われ続けているわたしが言うことではないかもしれないが、そんなわたしからそう評価されるあの子は本当に不思議でおかしな子なのだ。
わたしと違ってリピスは相手によって姿を変える。相手が好意を持てば好意を返し、相手が悪意を持てば悪意を返す。まるで鏡のようだと思う。
わたしは一度も見たことはないけれども、不思議と鏡と少女を題材とした物語があるらしい。リピスはまさにそれのように思えた。
ころころ、ころころ。なんとなく転がった。わたしが転がれば数多の者達はぶつからないようにと距離をとるが、リピスだけは追いかけてきてくれることを知っているから。
そう、わたしを追いかけてくる時点であの子はおかしいのだ。だってわたしはリピスから■■を奪っているのに。それを理解したうえで、リピスはわたしを大切にする。不思議な子。不思議な少女。だからわたしは転がるの。
そのうえで、リピスが興味を持っている青年にもぶつかるの。覚えのある色だった。別にわたしは彼のことは何とも思っていない。彼はこちらに興味がなさそうだし、何よりあまり■■■■■には思えないから。でもリピスは違うらしい。
わたしは覚えている。リピスが彼に負けた後悔しさから泣いたことを。
わたしは知っている。リピスが彼に勝ちたいと躍起になっていることを。
わたしは感じている。リピスのそれは呪いのような執着であることを。
だからこうして嫌がらせにきた。
***
「なら振りほどけばいいじゃない」
自分とササの非など棚上げに、わたしははっきりとそう告げた。青年の力があれば小さな少女の手を振り払うなんて酷く簡単なことだ。それを今この場でしない理由は周囲の目があるからなのだろう、と先程の猫かぶりを思い出せば簡単に想像がつく。
「というかお嬢さんって何。あなたにそう呼ばれると面白さを通りこして鳥肌がたつわ」
とは言ったが、そういえばフェリシアには名乗ったがスウィートには名乗った記憶はない。名乗ってもどうせこちらの名前など憶えないだろうし、と。そう、どうせ向こうはこちらに興味などないのだ。わかりきっていることだが改めて再認識すると普通に腹が立ってきた。
「わたしリピスって言うの」
どうせ忘れているだろうわたしの名前をあえて名乗る。今は向こうは初対面のフリまでしているのだから別に何らおかしなことはないだろう。
「呼んでくれたら離してあげるわ」
わたしはただ笑った。彼がわたしの名前を呼ぶだなんて微塵も思わない。どうせ腕もその内人の目がなくなった隙を見て振り払われることだってわかっている。
だからこれはただの幼稚な嫌がらせだ。酷く苛立って仕方がないからこそ、ぶつけているだけ。
どうしてこんなに苛々するのかは、わたしにもわからなかった。
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