行き当たりばったり【sideリピス】

■お借りしました:アニーニケさん
 
 
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 もう少しでイベントも終了だろうか。そう思うと、つい焦りの気持ちが湧いてしまう。別に優勝したい欲があって来た訳ではないが、それでも競争ものにおいては勝ちたくなるのが人というものだ。
 今回のイベントではシンの強さを確認出来たし、ビビのいいバトル練習にもなった。けれども、そう。それによってトトの出番が圧倒的に少なかったのだ。トトは別にバトルが好きという訳ではないが、流石にバトル数が二匹に比べて格段に少なかったことには少し拗ねているように思えた。
 だから今度別チームのトレーナーにバトルを挑む際には、トトにしようと決めて散策していると。丁度リングが振動音を鳴らした。ナイスタイミングとはこのことだろう。わたしは音の鳴る方へと進んだ。
 
 そして、ぶつかった。
 
 茂みから出た瞬間の位置にその人はいたのだ。わたしからすれば随分と背の高い男性の長い白髪は三つ編みで結われており、その二撃目を喰らわずにすんでよかったとしか思えない。
 ぶつかった反動で地面に尻をつきそうになったわたしの身体を、また勝手にボールから出たトトが抱き留める。あなた本当にこういう時一番動くのが早いし、有能よね。そんな風に思いながらもトトに体勢を直してもらっていると、わたしがぶつかってしまった男性が申し訳なさそうに屈んで手を差しだしてくれる。差し出された手は仮装の長い袖のせいで隠れてはしまっているが、けれどもこれは彼のやさしさからくる好意だ。わたしは悩みながらも手を伸ばした。
 
「悪い、大丈夫か?」
「大丈夫よ。こちらこそ、急にぶつかってしまってごめんなさい」
 
 想定して手を握れば、位置はあっていたようだ。男性に引き上げられる形で、わたしはしっかりと地面に足をつけ直した。
 
「怪我がないなら何よりだ。……そのエンペルト怒ってる?」
「……あー……トト、あのね。今のはわたしの不注意のせいよ」
 
 そうは言うもののトトは不満そうに嘴を尖らせるばかりだ。やめなさい、普通にあなたの嘴は当たったら痛いのだから。その嘴を手で無理矢理下げつつ、わたしは溜息を一つ。
 あ、そうだわ。そうすればいいんじゃない。
 一つの案を思いついてわたしは改めて男性を見上げた。うん、ちゃんと緑の腕章はつけている。なら別にここに関しては躊躇する必要もないわね。
 
「バトルオアトリート。ごめんなさい、この子の相手をしてくれないかしら」
「俺と?」
「ええ。それに、あなた強そうだから」
 
 これはただの直感だった。けれども、わたしの勘はあまり外れたことはない。トトにバトルをさせるのならば強い人がいいとも思っていたし、まさに僥倖というものだ。
 
 
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▼参加登録ポケモンより、「トト(エンペルト♂)」でアニーニケさんにシングルバトルを挑ませて頂きました!
 作品内で宣言していませんが、賭けチップ数は15個にさせて頂いております。
 不都合がありましたら断ってください!

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