前を向いて【sideリピス】

■お借りしました:Eさん

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 あたたかな温もりがふれて、海の水の冷たさに冷えていた心がゆっくりと熱を取り戻していく。あなたはがんばっている、と言ってくれているようなその接触にますます涙が出そうになって、それを堪える。

「ありがとう、E。あたたかいわ。すきよ、だいすき」

 ポッチャマから貰った花を髪に差し込んで、手をそのやさしく大きな存在へと伸ばす。氷タイプであるということが信じられないぐらいにその子はあたたかくて。ぎゅうとその首元に頬を擦り寄らせる。やわらかなその感覚が愛おしくて、どうしても癒されてしまう。

「わたし負けないわ。がんばる」

 ここに来てくれたのがEでよかった。だってもしもここにきたのがユメキチだったなら、わたしは意地を張ってまた海にでも飛び込んでしまいそうだったもの。甘えるように擦り寄って、わたしはその子から身を離した。
 その際にふと、気付く。わたしのスカートの下に先程海底で見つけた星があったのだ。どうやら溺れながらも星だけは手にいれていたらしい。どこまでも無意識に強欲な自分に感心してしまった。
 星を手にして、撫でてやる。落ちてしまったお星さま。迷子の溺れたお星さま。あなたも、これからはわたしと共にいきましょう。

「よし、E。背中にのせてちょうだい」

 立ち上がったリピスを見てEは頷いた。リピスが何をしたいのかなんてお見通しなのだろう。Eの背に乗って、リピスは周囲を見渡す。自分を助けてくれたポッチャマ。あの子に礼を告げるために、あの子を探さなければ。わたしは涙を拭って、茂みの方を向いた。

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▼ ねがいぼしを拾いました。

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