結果と交渉【sideリピス】

■お借りしました:ダイゴロウさん


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 雑踏が賑わう街の中、喫茶店で休憩をしながらわたしはムムの頭を撫でる。ユメキチはわたしの奢りということもあって好きなものを好きなだけ頼んでいるが、食事は大切なことなのでまあいいだろう。これ以上頼んだら給与から差し引くが。
 そして大事な夏の調査について。その結果報告をユメキチから受けて、自分の目で見ていた分も加味してわたしははっきりと告げた。

「六十六点」
「それ何点満点だよ」
「普段よりかは勤務態度は真面目だったけれども、今一つだったわ」
「このガキ……」
「ボーナスの御褒美を考えていたのだけれども今回はなしね」
「はあ?おいおい、あんだけ頑張ったのにかよ」

 ええ、と頷いてわたしはパンケーキを口に含んで、あ、それならと思いつく。

「わたしのこの髪飾りを直してくる。もしくはそうね、わたしが満足できるバトルを見せてくれるなら褒美をあげてもいいわ」
「あんだけ働かせてまだ働かせる気かよ?そいつぁ流石によぉ」
「そう。じゃあバイクはなしね」
「あ?」
「あれ、買ってあげようと思ってたのよ」

 あれ、とわたしは喫茶店の外を指さす。オープンテラスからは窓硝子の遮りもなくそれがはっきりと見えたことだろう。乗り物を販売する店、そこに並ぶ数多のバイク達。

「欲しくないかしら?わたしの指示に応えられれば特別給与に加えて、あの中のどれか好きなものをあなたに買ってあげるわ」

 元々乗り物を一つは購入しようと考えていた。コランダ地方は広い。歩き続けるのも旅としてはいいことで不満はないが、移動に速さを求める必要だっておのずと出てくることだろう。その時に備えて用意をしておくのは無駄な出費ではない。
 ユメキチの身体能力ならきっと乗れるだろうと踏んでいたし、彼がバイクを眺めていいな~と緩く呟いていたのをわたしは覚えていた。勿論彼がこの要求を吞まないならそれはそれ、だ。その時はわたしはユメキチの腕に乗る頻度が増えるだけ。

「どうしたいかしら?」

 二口目のパンケーキには生クリームを乗せて、口に含んで。ゆっくりと味わってからフォークを置いて、口元をナプキンで拭いてにっこりと微笑んだ。

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