青に魅せられる【sideミィレン】

■お借りしました:バロックさん、手持ちちゃんたちを少しずつ
 
 
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 子どもだけではなく大人達も寝静まった頃合。クローズの面が向けられた店の入口の看板を眺めてから、裏口から勝手に中に入る。
 
 入ったら、くそ男が手持ちに燃やされている場面だった。
 暑苦しい。火の粉がこちらにかかってこないように扇子で避けていればミルクがこちらへと寄ってくる。ホアンシーがミルクの身体を抱きしめてふらふらと踊り出せば、人見知りであろうミルクはあまりいい顔をしていなかった。とはいってもホアンシーを止める方が難しい。私はひとまず放っておくことにした。
 あの茶番いつまで続くのかしら。ひとまずオーロラの気が済むまで待つとしようかと、私はカウンター席に腰かけて嫉妬に狂うポケモンと、相も変わらず愚かな人間を眺めた。 
 
 最終的にキールによって消火活動が行われ、バロックも店も無事にすんだ。正直バロックはそのまま燃えてもいいんじゃないかというか、その方が世の為だろうにと思ったがオーロラはそれはそれで悲しむのだろう。今の私には甚だ理解出来やしないが、恋に盲目だった過去の私であれば理解出来てしまうのだろうか。
 
「お見苦しいところをお見せしました」
「あなたに見苦しくないところがあるとでも……?」
「精進致しますね」
 
 口から滑り出る流暢な綺麗な言葉に美しいと賞賛される笑顔に、思わず顔をしかめそうになる。そういった適当な表面だけの挨拶はどうでもいい。この男とは仕事の都合上付き合いを細々と続けてはいるが、私の嫌う類の男の一人に違いもないのだから。似すぎている世界で一番嫌いな男の姿が脳裏に過ぎって、思わずテーブルを殴りつけそうになったが必死に耐える。
 このまま長居すればストレスが溜まるだけに違いない。さっさと必要情報だけを頂いて帰るとしようと思った時のことだ。燃やされたせいか、バロックが常に身に着けている手袋が焼け焦げており肌が覗く。そこにあったのは肌だけではなく、青い煌めきを秘めた指輪だ。
 
 思い出す。フォンミイもそれをつけていたことを。
 思い出す、よくよく世界を注視していればあの青い光を持つ人間が多くいたことを。
 
「バロック」
「はい、何でしょう?」
「綺麗な指輪ね」
 
 右手の小指に嵌められた青の光。
 それをどうしてか、はじめて見た時よりも美しいと思えたのは何故なのだろうか。
 それをどうして、こんなにもすんなりと褒めてしまったのだろうか。
 
 私にはわからない。

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