季節は巡って【sideレフティア】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:テオさん
 
 
------------------------------------------------------------
 
 
 あたたかく甘い春の季節が終われば、爽やかな夏の季節もまた一瞬で過ぎ去った。そうして季節は過ごしやすい秋の季節に変わって。涼しくなり始めたせいか、___少しだけ、あたたかかった季節のあたたかさが懐かしくなって、寂しさを抱いていた。
 
 
 
 
 どうしたものか、とレフティアは頬に手を当てて首を傾げていた。エリューズシティで催されるイベント事。それに興味を持ち、アニーニケに連れてきてもらった彼女はまさに今絶賛迷子になっていた。
 たったの二秒、二秒だ。二秒だけアニーニケが目を逸らした瞬間にレフティアははぐれてしまった。いっそのこと才能とでもいえばなんといえばいいのか。
 けれどもまあ、一人になってしまったとはいえするべきことは決まっている。グリーンチームの一員として、他チームのトレーナーとバトルしてスイーツチップを稼がないといけない。こういったバトルイベントに参加するのははじめてのことで、どうしても心が躍ってしまう。普段は野生ポケモンや、ジムに来たトレーナーとしか戦ったことがないからこそ、一般トレーナーとバトルするのは新鮮で仕方がなくて楽しみなのだ。
 
 それに、とレフティアはふと思う。このイベントはリーグ協会が関与する大規模なものだ。だからこそ沢山のトレーナーが集う。もしかしたら、彼も来ているかもしれないなんて。そんな微かな淡い期待を抱いていた。
 
「……レフ!」
 
 今まさに、想いを馳せていた人物の声が鼓膜を擽った。レフティアは反射とばかりに振り返る。思わず驚きで茫然としてしまったのは仕方のないことだろう。だって、再会を望んでいたテオが自分の目の前にいたのだから。
 
 
***
 
 
「……よかったら、一緒に行かない?」
 
 再会を喜び、テオとの会話に花を咲かせていた時だ。バトルは得意ではないと言っていたテオがグリーンチームに所属しているのにも驚いたが、その後に続けられた言葉にも驚いた。
 克服したくて、と振り絞られた声はか細くて儚くて、けれども確かな意志を持ったものだった。彼が勇気を振り絞っていることは確かだ。だからこそ、自然と浮かぶものは穏やかな微笑みになってしまう。彼の言葉の続きが聞きたい。勇気を振り絞る彼を見守りたい。そんな想いで、レフティアはやさしくテオを見つめる。
 だからだろうか。強張っていたテオの表情が微かに和らぎ、言葉を紡いだ。その言葉にレフティアが返す言葉なんて、たった一つだ。
 
「勿論です!」
 
 ああ、どうしようか。嬉しさを隠し切れない。テオが勇気を振り絞り、自らの殻から外に出ようとしていることも。共に行こうと誘ってくれたことも。何もかもが嬉しすぎて、思った以上に溌剌とした声が出てしまったことを少し恥ずかしく思うが、それでも嬉しさの前には敵わない。
 
「!ありがとう……」
「それに、わたくしずっとテオさまにお会いしたかったのです。だから、共にいられる時間が増えるのが嬉しくて。そう言って頂けてとても嬉しいです」
 
 すらすらと本音が口から零れ出る。それをテオはやはり微笑ましそうに聞いてくれるものだから、レフティアに躊躇う感情が生まれる訳もない。
 
「精一杯サポートもしますね」
 
 そっとテオの手を取って彼を見上げた。改めて視界に入った彼の装いは今回のイベントに合わせて普段と異なり、常に結っている髪は降ろされている。
 
「髪を降ろしていらっしゃるの、わたくしとお揃いですね」
 
 自分もテオも、どちらも髪を今日は降ろしている。だから単純に、そう思った。故にレフティアはなんとなしに呟いた。それが思った以上に嬉しくて、また笑みが零れてしまったが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?