実食【sideサラギ】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:イチカちゃん
※恋愛表現・描写が強いのでご注意ください。

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 今日はバレンタインデー。そんなことは暦を見れば明らかなことであり、街のうわついた様子から数日前からそういった日があると認識するのは簡単なことだ。毎年貰っているからこそ忘れる訳がないというのもあるが。
 受け取った中身を確認すれば明らかに既製品ではない少し不慣れなラッピングに、手作りだなんてことはすぐに理解出来る。ああ、だからガラムとアカネが遊んでほしいと俺を街に連れ出したのか。俺達の足元で満足そうに顔を見合わせている二匹の頭を軽く撫でた。

「そりゃあ俺以外いないわな」
「う……堂々と言うの腹立つ……」

 袋を一つ手に取り、リボンを解く。中に入っていたチョコレートは去年まで見ていたものとは異なり、手作りであることがわかる拙さが伺える。けれども、頑張って作ったのだということもそれは同時に理解させた。
 スモーキークォーツを思わせるようなブラウンの色はチョコレートなのだからそりゃあ予想が出来ていた色だ。それでも、今まで貰ってきていた既製品よりも光沢があるように見えたのは気のせいではないだろう。
 おそるおそるといったようにこちらの様子を伺うイチカの顔を見てから、問答無用でそれを口に含む。甘い。チョコレート特有の独特な甘さが口内いっぱいに広がり、舌の上で唾液に絡んだ。

「成程」
「な、成程って何」
「味?」
「へ、変な味はしないはずだけど」
「確認すりゃいいじゃん」

 イチカが被っていた帽子を外して、通行人達がいる方に下ろす。身を屈めれば自然と影が落ちて、こちらを見ていたイチカの表情が影に包まれる。苺色の瞳が完全にこちらを移した際に唇を触れ合わせれば、触れたそこが熱くなる。
 驚きで硬直した唇を舌でなぞって、無理矢理に侵入して縮こまっていたそれを絡め取れば俺の舌に唾液とともに絡んでいたチョコレートの甘さが移った。途端、沸騰したように赤くなったイチカの体温と赤くなった頬に満足して唇を離して、帽子をイチカの頭に戻す。

「~~~~ッ……!?!?」
「御馳走様」
「そ、そんな食べ方しないでってば!!し、しかもここ、外」
「あっそう。じゃあ、」

 イチカの耳元に唇を寄せて、俺は囁く。それに完全に言葉を失い、真っ赤になったイチカの表情は本当に苺のようだった。

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