馳せた想いの結果【sideレフティア】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:ルスカちゃん、ヴァロくん

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 頬を赤らめて逃げるように去っていったヴァロの姿に、それを見送ってからこちらへと輝かんばかりの笑顔を向けてくれるルスカ。彼女の笑顔に再び笑みが誘発されて、微笑みを強くしたレフティアは心の底から穏やかな気持ちになった。

「ルスカさまとヴァロさまは本当にいつも仲睦まじくて、見ていて嬉しくなってしまいます」
「でしょ~~?でもさぁいっつもツンツンしちゃって!変に大人びなくていーってのに~」
「ヴァロさまぐらいの年頃の子でしたらかわいらしいものですよ」
「レフち優し過ぎん?」

 本当男だったら絶対惚れちゃう~とルスカが先のように愛らしい言葉を口にしレフティアに抱き着いた。自分とは全く異なる褐色の色は健康的で見ているこちらも心が豊かになり、揺れる金糸はやわく華やかで目を惹き付ける。何よりそのくるくると変わる表情に元気な声、活発な太陽のような明るさはとても愛らしいものだ。
 ルスカさまもとても美しくて可愛らしくて愛らしいのですけれども、と思いながらレフティアは抱き着いてきたルスカの背中に腕を回しぎゅうと抱き着く。最初は少しだけルスカのスキンシップの高さに驚いたものだが、すぐに慣れてしまったレフティアにとっては今は嬉しいものの一つに他ならない。
 寒い寒いフィンブルの土地。彼女達が運んだものは甘いスイーツだけではない。見ているだけであたたかくなる和やかさと、触れあうことで嬉しくなれる幸福感だ。

「ああ、そうです。ルスカさま、よろしければこちらを」
「ん?えっ、やっば!?超キレーじゃん!?」

 抱き着いていた腕をやんわりと離し、レフティアは持ってきていた紙袋を取り出す。その中から掌サイズのガラスケースを二つとり、一つをルスカへと差し出した。
 ガラスケースの中には氷水晶に身を包んだ淡い桃色の花があった。桃色の花を中心として取り囲むように細長い氷が円を描く。その円の途中には小さな細長の球体が二つアクセントとしてあしらわれていた。今でも小さな氷の煌めきを落とすそれが溶ける様子はない。

「メガニウムをモチーフとしてとけないこおりで作ったブローチです。こちらをルスカさまに差し上げたくて」
「マジ?!貰っていーの?!こんなすごいの!」
「ルスカさま達のことを想っていたらつい手が……よろしければ貰ってあげてください」
「もち!も~~レフちずっとも!ずっしょ!!」

 嬉しそうにはしゃぐルスカの様子にレフティアは嬉しくなって微笑む。微笑むのだがルスカの使う言葉はレフティアが知らないものがいくつかある。はじめて聞いた単語を頭の中にしっかりと刻み込み、家に帰ったら調べようと意気込むのだった。

「ん?達?って~ことは?」
「はい。ヴァロさまにも」

 優しくルスカを抱きしめ返し、レフティアが微笑んだ時だ。丁度紅茶のお代わりを注いで持ってきたヴァロが二人の様子を見て首を傾げ、ルスカがヴァロの頭を抱きしめるように腕で覆った。

「ちょっ、零れるだろ!」
「そこんとこちゃんとやってっし~~ほらほらレフちの方見てみ」
「見るから放せってば!」

 仲睦まじいなあと穏やかに見守っていたレフティアはルスカから解放されたヴァロがこちらへと近付いたことに気付き、いけないいけない、と我に返る。先ほど取り出した二つのガラスケースの内のもう一つをヴァロの前に差し出すようにカウンターへとことりと置いた。
 それもまたルスカに差し出したのと同じように氷水晶に身を包んだ花だった。しかしこちらはルスカの桃色の花とは違い、緑の葉に見える三角のそれが二つ繋がっている。こちらもまたルスカのものと同様に緑の葉を中心として細長い氷が円を描いているが、こちらにはダイヤを思わせる小さな結晶がいくつかついている。

「え、これ……」
「わたくしからルスカさまとヴァロさまに。お二人に明日会うのだと思うと嬉しくなって作ってしまったものです。宜しければ貰ってください」

 可愛らしいルスカにはメガニウムを、男の子であるヴァロにはノクタスがいいだろうか。そんな風に考えながら作ったブローチを差し出して微笑むレフティアに一切の邪な感情はなく。ただただ純粋な好意だけが二人に向けられていた。

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