狂人の手持ちたち【sideカルト】

■森ノ遊戯場イベントに出る直前の話。
 
▼自キャラだけの話です。
 
 
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 目的を持った友はいつだって楽しそうだ。いいや、彼はいつだって楽しそうだ。だって彼はそういう人間だから。つまらないものも楽しいと思える、見いだせる思考を所持している。何の価値もない道具も彼にとっては、面白い玩具なのだ。
 けれどもそんな彼が本当に本当に楽しがるものが何かを俺は知っている。知っているからこそ、今の彼を止める気などない。
 
「それじゃあ、カルト達は待っていてくださいね」
 
 今回のイベントでシャッルがバトルメンバーに選んだのはキラーダとウィシャーハとコルカールだ。本気を出す気がないのは理解していたが、よりにもよってコルカールを連れていくとはよっぽど今回はイベントを純粋に楽しむ気なのだということがわかる。
 
『羽目外しすぎんなよ』
『私を何だと思ってるのよ』
『お前らじゃないない』
 
 寝転がる俺を見下してきたキラーダと、その横で浮遊するウィシャーハを見て俺は首を横に振った。ウィシャーハはまあそうだろうなという目をすぐ真下のコルカールに向ける。コルカールは案の定俺の言葉なんて聞いていなかったようで、ポケモンセンターの硝子に映った自分の姿に見惚れていた。
 
『おい』
『ん?ああ何だいカルトくん。僕に何か用があるなら是非とも名を呼んで御使命しておくれよ。その方が僕だって心地がいいからね』
『はいはい。コルカールコルカール。羽目外しすぎるなよ』
『僕が?羽目を?外しすぎる?訳がないじゃないか!ちょっと楽しさに負けてしまうだけだよ』
『それなんだよなあ』
 
 楽し気に身を揺らめかせながら流れるように言葉を紡ぐこいつは口ごもるだとか詰まるだとかいう単語とは縁遠いポケモンなのだろう。何を言っても聞く耳をある意味持っているようで持っていないようで持っている。とにもかくにも相手をするのは面倒くさいの一言に尽きる自己肯定感の塊の自分至上主義のこいつと話すのは慣れても疲れる。キラーダは面倒くさすぎて一切話そうとしない辺り素直だ。
 
『マスターに迷惑だけはかけないさ。だって僕だからね』
『何が何の根拠なのかは全然わかんねえけどまじでお前そういうところはちゃんとしてるからなあ……』
『この面倒くさいところだけなければな』
 
 ぼやけばウィシャーハが同意するように頷く。キラーダに至ってはもうコルカールの声を聞くのすらも煩わしいとばかりに耳を下げていた。いや、器用だな。サイコキネシスで身体に密着させて声聞こえなくしようとしてるのかそれ。
 
『じゃ、ま。いつも通りちゃんとしてきてくれ』
『任せておくれ』
『キラーダ、色々と頑張ってね』
『今すぐイグドゥとコルカール交代してほしい』
『駄目よ。だってマスターが決めたことでしょう?私達にとってマスターの決定は全て。ね?』
 
 唸り声を上げていたキラーダをあやすようにイグドゥが抱き上げて軽くあやす。微笑むイグドゥに頭を撫でられてキラーダの機嫌も若干はマシになったようだが、それでも眼下のコルカールを見ては食べたものを吐きそうな顔をしていた。

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