白銀髪と蒼瞳【sideグリモア・ドティス】
▼こちらの流れをお借りしています。
■お借りしました:テラーさん
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グリモアはやっぱりテラーは不思議だと思った。ひらひらと揺れる袖をじっと見てから、その先を掴みたがっていたキマリスを抱き上げて、長い袖の先を掴ませる。
揺れていたそれを掴めたことがよっぽど嬉しかったのかぱあ、と表情を明るくしたキマリスの頭を撫でてから、きょとんとした様子のテラーの袖を離すようにキマリスの手を掴んで。グリモアもキマリスの真似をするように一瞬だけテラーの袖の先を握った。
「またね。テラー」
そう告げた時のテラーの表情が、今までグリモアが見たこともない表情だったような気がしたのは。気のせいだったのだろうか。
不思議な人だ。でも嫌いでは無い。だからいつか新しい仲間が加わったら、またテラーに新しい手持ちの話をしよう。そう決めて、グリモアはテラー達に背を向けて森の中に戻った。
***
随分遠くの方から聞こえた音の方へ向かっていたドティスはぴたりと足を止めた。そこでは一人のトレーナーが休息をとっていたからだ。先程遠方から見た方角と音の距離からして、先程聞こえた音のバトルの正体は彼女だろうか。
黒にターコイズの線が混じった美しい長髪と、白のリボンがあしらわれた愛らしい長い袖を揺らすその人物。その人の傍に近寄って声をかけることに躊躇いはなかった。
「おい、さっきバトルしていたのはお前か?」
「……、………」
声をかければ、その人は振り返る。そしてどこか驚いたような様子を見せたような気がしたが、それが気のせいかどうかは定かでは無い。
顔のものは化粧であって傷ではないとすぐに理解してドティスは安堵する。かつて顔の傷を傷ではないと言い張った男の時に十分すぎる程疑う力は得たが、今回はそうでなくとよかったと。
「イエローチームだ。もしも手当が必要なら行う」
淡々と要件だけを告げるドティスにアスピリンは慣れたもので、何か突っ込む気力は起きやしない。
先程のバトルの音のトレーナーが目の前の人物ではなかったとしても、別場でバトルを行い傷を負っている可能性はある。
対象はこのイベント中どころか全ての傷付いたポケモンや人であるという、治療本気勢のドティスにすれば何ら躊躇うことのない問い掛けだった。
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