楽しみの前の忘却【sideグリモア】
■お借りしました:ソルシエールさん、ニャスパーくん
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キマリスが拗ねた。
グリモアのワンピースの中からずっと他の手持ち達のバトルを見ていたキマリスは、ものの見事に拗ねてしまった。今回グリモアが選抜したメンバーの中では一番バトルが好きであり、強くなりたがっているキマリスはいつまでたっても自分の出番がこないことに拗ねに拗ねてしまったのだ。
勿論バトルを見ていることもキマリスは好きではあるが、それはそれ、これはこれ。別の話だ。そんなこんなで拗ねたキマリスはグリモアから少し先を歩き続ける。小さな後ろ姿を眺めながらグリモアも流石に次はキマリスをバトルに出そうかと考えた。
その時だ。つけていたリングが振動し始めたのは。この揺れ方は別チームの参加者が近くにいる時のものだ。自然と周囲をグリモアが見渡すも、先にキマリスが勝手に動く方が早い。
「……キマリス」
グリモアが声をかけるも、キマリスは自由気ままに森奥へと走っていく。責めることなくその背を追いながら視線を向ければ、キマリスが一匹のニャスパーに近付いているのが見えた。
チップを数えていたのか、それともしまい直していたのかは定かではないがそのニャスパーの行動からして今回のイベントの参加者の手持ちであることは確かだ。先程リングが知らせてくれた別チームのトレーナーの手持ちだろうか、と自然とグリモアが思考を行い、それは正解だったとすぐにわかった。
「おや」
「………」
「この子はアンタの手持ちかい?」
ニャスパーが持っていたチップをつついていたキマリスを見下ろしてから、彼女の視線はグリモアに向かう。見下ろされただけにすんだのはチップを盗むなんて意志がキマリスにないことをすぐに理解してくれたからだろう。フラージェスの仮装をした左頬から目にかけて大きな傷を残した女性。その人の手首と脚にはレッドチームの人間であることが明確となる証がついている。
女性の問いかけにグリモアはこくりと頷く。そしてキマリスの方に近寄って手を差し出すと、キマリスは期待に満ちた瞳でグリモアの手を握り返し、女性を見上げた。
言いたいことは明白だ。グリモアはキマリスに頷いてから女性を見上げた。じっとこちらの様子を見守るかのように見ていた女性は、グリモアの視線に気付いておや、といった風に僅かに微笑む。
「バトルオアトリート。賭け数は三十」
ニャスパーが持っていたチップの数を横目で見てから、グリモアは賭け数を発した。
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▼参加登録ポケモンより、「キマリス(ヨーギラス♂)」でシングルバトルを挑ませて頂きました!
賭けチップ数は30個にさせて頂いております。
不都合がありましたら断ってください!
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