力勝負も賭け勝負【sideグリモア】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:ソルシエールさん、ニャスパーくん
 
 
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 待ち望んでいたバトルが漸く出来るといわんばかりにキマリスは喜び、相手のニャスパーを見据える。可愛らしい杖を持ちチャームボイスを放つその姿はどこからどう見ても愛らしく見るものが見れば卒倒するものだ。けれども女性の言葉通り、可愛いから侮っていいという相手でもない。
 
「キマリス、ストーンエッジ」
 
 的確に狙いを定め、こちらへと向かってくる愛らしい音。避けるよりかは落とした方が早いかと指示を出せば、キマリスは大地を小さな手で殴りつける。殴りつけたと同時大地から生まれた岩の壁が素早く錬成され続け、音とぶつかった。音と岩がぶつかり、自然と衝撃波がトレーナー達の髪を揺らす。
 
「やるじゃないか。その子、しっかりと鍛え上げてるんだね」
 
 女性の賞賛の言葉にグリモアは頷くが、それと同時に彼女がとてもいい目を持っていると理解する。ポケモンバトルに強いトレーナーに必要な要素の一つには、間違いなく見る目もあると思っていた。強そうだとわかると同時、無意識のうちに嬉しくなるのはトレーナーとしての性なのだろうか。
 先程ニャスパーが放った技はチャームボイス。弱点であるあくタイプへの対策だろうかと頭の片隅で思考しつつ、エスパータイプだからこそ補助技にも富んでいそうだと考える。猪突猛進にキマリスに突っ込ませるのは得策ではないことはわかっている。それでも、”そうするのが得意ならそうさせてやろう”とも思う。
 
「捕まえて、アイアンテール」
「おっと、ニャスパー。リフレクター」
 
 ストーンエッジで出来たでこぼこな大地の上をキマリスは真っ直ぐに駆け抜け、跳躍する。真正面から振り下ろしたアイアンテール。軌道も何もかもが筒抜けなそれをかわすことは容易だっただろうし、現にリフレクターによってそれは受け止められた。
 強固なリフレクターにアイアンテールがぶつかったまま、キマリスはリフレクターの向こうのニャスパーを見つめ、ニャスパーは杖を構えてキマリスを迎え打つように見つめ返す。
 
「ギャンブル」
「?」
「割れるか、割れないか。どっちだと思う」
 
 重力を味方につけて、キマリスはアイアンテールに力を更に籠める。ニャスパーのリフレクターを割れるかどうかはわからない。それにもしも割れてニャスパーに攻撃が届いたとしても、リフレクターによって物理ダメージの威力は半分にされることだろう。
 だからこれは本当にただの賭けだった。
 
「キマリス、跳び上がってりゅうのまい」
 
 割れない壁を使って、キマリスは更に跳躍した。そしてりゅうのまいを舞いながら、再び落下していく。尾に力を溜め込みながら。先よりも重さを持って、威力を持って。
 
「へえ、なら賭けようか。どっちだい?」
「割る」
「面白い答えだ」
 
 グリモアの淡々とした回答は賭けというよりかは、宣言のようなものだった。それに女性がどこか楽し気に微笑んだような気がしたが、彼女はすぐにニャスパーに指示を出す。
 その様を眺めながらも壊せるか壊せないかを試す。ただの力比べのアイアンテールをリフレクター向こうのニャスパーを狙うように、キマリスは振り下ろした。

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