寄り添う幸福【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。 
 
■お借りしました:チトセちゃん

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 目の前で号泣する女の子を見て、そういえばユメキチは確かに怖がられる様相をしていたことを思い出す。
 兄の外見は無事聞けたので、ひとまずユメキチにもこの子の兄を探すようにと告げて行かせたが、兄も兄で怖がったらどうしようか。とは思ったが第一目的は兄妹の再会だ。少々の恐怖は我慢してもらおう。
 
 ユメキチの姿はもうここにはないが、よっぽど恐ろしかったのか女の子はまだ泣き続けている。何だかんだで自分よりも小さな子をあやしたのはルルぐらいしか経験はない。ルルはこれをすれば泣き止んでくれるのだけれども、と思いながらわたしはその子の頭をやさしく抱きしめた。
 
「ふぇ……」
「大丈夫よ。こわい人もいないし、お兄さんも見つかるわ」
 
 だから大丈夫だと安心させるように、そっと額へと触れるだけのキスを贈る。眠る前に母がしてくれるやさしいやさしい甘い触れ合い。どこか擽ったくもあたたかいそれはわたしは大好きで、よく寂しくて泣いていたルルにしてやっていたのだ。
 少しは気が紛れてくれたようだ。涙はまだ溢れているが、それでも先までの勢いには負ける。
 
「お花は好き?」
「?」
 
 女の子がつけていた可愛らしいナゾノクサのポシェット。それを見て好きならいいのだが、と思いつつわたしは女の子を連れてしゃがみこむ。ひっそりと群生していた小さな草花をいくつか摘んで、それを結いあげていく。
 何をしているのだろうかとどこかそわそわした様子でわたしの手元を見ている女の子に小さく微笑みを零してしまいながら、わたしはクローバーと白詰草で作った花冠をその子の頭にそっと乗せた。
 
「はい。プレゼント」
「わぁ…!」
「お姫さまみたいよ」
 
 屈んだままの体勢で膝に肘をついて、覗き込んだ女の子の髪をやさしく整える。少しは気が晴れてくれたらいいのだけれども、と見上げていればその子の花冠の中に一つ四つ葉のクローバーが混ざりこんでいたことに気付く。
 ああ、偶然にも幸福がついているなら問題はなさそうねと。わたしは小さな安堵を得た。

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