推理と挑発【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:スウィートくん
 
 
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 明らかな違和感がそこには確かにあった。直感でもあっただろうし、これまで観測していたからこその推理でもあった。
 
 他者を傷つける人間がどうして調査の手伝いになどきていたのか。誰かのために動くなんてこの男らしくない。
 他者に関心のない人間がどうして町民が零した噂話なんかに食いついたというのか。見る人が見れば騙されてしまう爽やかな笑顔なんてこの男らしくない。
 
 花運びについて、そしてそれに関連するシェイミというポケモンの話をお爺さんは朗らかにしてくれた。それに対してスウィートはやはり胡散臭い笑顔を振りまく。
 それを純粋に気持ち悪いと思った。
 
「その玩具はあげるよ」
「いいの?」
「ああ、見つけてくれた子にあげようと思っていたんだ」
 
 祭りを楽しんでおくれとお爺さんは微笑んだ。それにはやはり違和感は抱かない。抱くのは、すぐにこの場から離れようとしている男にだ。
 お爺さんが背中を向けた瞬間、離れようとしたその腕を掴んだ。そうすればやはり嫌そうな顔を返される。どこからどう見てもスウィートだ。何故こんなにもわかりやすいのに知らぬ存ぜぬが通じると思っているというのか。
 
「フェリシアとマーキアは?」
 
 普段は彼の傍にいる二匹の姿がない。そう問い掛けたのは純粋に彼女達に会いたかった自分がいるというのと、____純粋な疑念。
 
「何のことだか」
「へえ。あくまでも初対面のフリを貫くのね」
「フリも何も。誰と勘違いしてる訳」
「あっそう。じゃああなたはわたしを知らないと」
「そうだよ。もういい?」
「それなら初対面相手にあなたとっても失礼ね」
「はあ?」
「わたしも失礼だっていいたそうな顔ね。でも仕方ないじゃない。わたしはあなたを知り合いだと勘違いしていたのだもの」
 
 酷い屁理屈で後付け理論だ。それでも純粋にこの男から目を離しておくのは悪い予感がした。ただ、それだけだ。
 間違いのない反論が来る前に、先手を打つ。それは子どもだからこそなせる業であり、わたしという卑怯で打算的な子どもだからこそ出来るものだ。
 
「でも初対面なら仕方ないわよね。はじめまして、素敵な黒髪の方。情報収集のヒントをあげたわたしに何か御礼は頂けないの?」
 
 先の様子からして、老人の話した内容は彼にとっては有益なものだったのだろう。何故有益となりえるのか。他者を傷つけていた人間が、他者に関心のない人間が、そう一般的に知られていないポケモンの情報を望むだなんて。誰だっていい予感はしない。
 不穏因子を調査、監視しておかなければと思うのは、彼の正体を知っていれば当然の考えだった。

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