明滅する光【sideガラド・ドティス】

こちらの流れをお借りしています。     
 
■お借りしました:テイさん、ルーミィちゃん、オセアンくん、ミィミくん
 
 
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 何でポケモンバトルが好きなのかと尋ねられたことがある。ポケモンバトルを必要なものとしか捉えていないドティスからの質問と思えば、納得のいくものでしかない。ガラドはその問いかけに対して、はっきりと答えたのだった。
 一切の迷いなく。”楽しいから”だと。
 
 
 
 光り輝くミィミの姿は、ハルシオンが持っていたひかりのこなをどろぼうしたことの何よりもの答えだ。笑いをこらえるテイに、思わず溜息を零すドティス。まさかハルシオンがひかりのこなを持っているとは思っていなかったルーミィ。そんな三者三様の反応を見せる中ガラドは耐えきれずに笑った。
 
「流石やなぁ」
 
 ルーミィの戦法の意外性も、想像もしていなかった出来事の発生も、何もかもが面白くてたまらない。これだからガラドはポケモンバトルを止められない、好きで好きで仕方がないのだ。
 
「恋人自慢か?」
「否定はせんよ」
「お熱いことだ」
 
 前を見据えたまま淡々と感想と告げるドティスにガラドはあっさりと答える。間違いのない惚気にルーミィは顔を赤く染め上げたし、テイは期待した様子でドティスを見たがその視線に気付いているドティスは堂々とスルーした。
 
「なあ、お前もうちょいやさしく……」
「知らん。ハルシオン、もう一度おいかぜだ」
「テイの兄貴可哀想……サハム!かえんほうしゃ!」
 
 先程ミィミに妨害された行動を再びドティスが指示すれば、ガラド同様に光るミィミの様子に大喜びしていたハルシオンは笑いながら翼をはためかす。ハルシオンとサハム、どちらともの素早さが上がったところでついでとばかりに指示されたかえんほうしゃをその風に乗せる。
 
「そうくるよな!オセアン、尾で庇え!」
「ミィちゃん、隠れながらつめとぎをもう一度!」
 
 突風に乗った火炎が火の粉を巻き散らしながらミィミの方へと真っ直ぐに向かったのを、見過ごす訳もなく。テイの言葉に頷いてオセアンがその長い尾を滑らせてミィミを守るように囲めば、火炎が直撃する。
 効果は今一つだとはいっても、直撃した以上はダメージは蓄積する。しかも、おいかぜにのった火の粉は終始降り注ぎ続けて隠されたはずのミィミにも僅かに降り注いだ。
 
「……綺麗なのに、すごい……」
 
 はらはら、はらはら。トレーナー達のところまでも火傷にはならない程度の威力の火の粉が届いては、肌に触れる前に消えていく。一種の花火のようにも思えるその橙と赤の色は、美しさすらも感じられた。
 
「綺麗だけじゃないだろうな、あれ」
「え?」
 
 思わず手を伸ばしてしまっていたルーミィの指先の直前で火の粉はかき消えた。テイの言葉に反応してルーミィが視線を向ければ、どこか楽しそうな笑顔が返される。
 
「目晦まし効果もあるぜ」
「目晦まし……」
「ティスの得意そうなことだ」
「皮肉か?」
「賞賛だって」
 
 美しく明滅する火の光は、視界に歪みを生じさせる。目を奪うといった意味でも、熱による効果によってもだ。あっさりと戦法を見破られたことを特に気にした様子もなく、堂々とドティスは言いのけてポケモン達に視線を移した。
 
「ひかりのこなを奪われて命中率を下げられたから、命中率なんて関係ないようにもしてるんだろうな」
「戦いにくくなったなら、場を整えるまでだ」
「オセアン」
 
 テイの呼びかけに応じて、オセアンは丸めていた尾を持ち上げて、勢いよく振り下ろす。地面を勢いよくパワーウィップで叩きつければ、先のサハムのじしんで崩れていた大地は簡単に持ち上がる。
 
「ならやり返すよなあ!ルーミィちゃん!」
「!はい!ミィちゃん、瓦礫の上を跳んで移動して!」
 
 持ち上がった割れた大地。地面の欠片。その上を小柄なミィミが跳んで移動していく。火炎に当たらないようにと気をつけてはいるが、どうしても多少は掠ってしまうのは致し方がない。
 今の狙いはずっと下に降りてこない、最も攻撃を当てにくい空中にいるハルシオンに他ならない。
 
「!ハルシオン」
 
 瓦礫を蹴り上げ、ミィミがハルシオンの間近に迫る。十分に整えた爪で、射程範囲内に入ったと同時に勢いよく振りかぶった。
 ドティスが何かの指示を出したが、それは放たれることなく終わる。目を閉じ何かを念じたかのようなハルシオンの身体に、威力が増したメタルクローが入ったことだろう。
 
「サハム!受け止めにいくんや!」
 
 大きなダメージを受けて偽物の羽を動かすことすら出来なくなったハルシオンの身体が重力に従い、大地に向かう。大地にぶつかる前にとサハムがその身体を背に受け止めれば、同様に落ちてきていたミィミものせてしまったため、慌ててサハムはミィミだけを腕で振り落とした。
 落ちてきたミィミをオセアンが尾で受け止めて、なんとか事なきを得る。ほっとしたように安堵の息を零したルーミィに任せろとばかりにテイが笑ったのを見て、静かにドティスが嫉妬していたのはわかりにくすぎて誰も勿論気付かない。
 まだ戦闘は続行出来るとハルシオンはサハムの上から羽ばたいた。それでもあと一撃でも喰らえば厳しいだろうか、とドティスもガラドも判断したところで、ガラドは改めて場を眺めた。
 
 割れた大地に転がる地面の破片。大分少なくはなったが、風によって火の粉は未だに空から降り注いでいる。
 歪で、それでいて、どこか美しい。___ただ一人のトレーナーとしては楽しくなる、光景だ。
 
「なあテイの兄貴」
「何だ?」
 
 両者互いにどちらも引かない状況で、ガラドは酷く楽しそうに声を上げた。ドティスの旦那であることは知らなかったが、テイの強さは鍛え上げられた手持ち達の様子から察していた。それに、彼が普段バンダナにつけているキーストーンが、その証明を色濃いものにもしていたのだ。そして今、対面したテイの強さを実感している訳で。
 沢山の旅をしてきた。色んなトレーナーとバトルをしてきた。けれどもキーストーンという代物を持つトレーナーは早々いない。更にその力を扱えるトレーナーはそこから更に少なく搾られてもしまう。
 だからこそ、ガラドはずっとずっと楽しみで仕方がなかったのだ。
 
 普段は首から下げているそれは、今は浴衣の帯の中にしまい込んでいた。チェーンに指をかけて引き出せば、間違いない女ものの指輪が現れる。ガラドが所持をしているのが明らかに不釣り合いなほどのその指輪には、煌めく七色の輝きが収められていた。
 
「本気勝負、しやへん?」
 
 相手が断る訳なんてないとわかって、ガラドは指輪を一度宙に放り投げて、チェーンを絡めて宙で掴む。握りしめた指の合間から七色の光が放出され、身に着けている暗い手袋の中でより一層その光の強さを如実にした。
 虹色の光の繋がった先は、サハムの尾の先にあった輪に嵌めこまれたメガストーンをなぞり、その光を誘引した。メガストーンからも放たれた強い七色の光がサハムの身体を包みこみ、爆発するかのように光を飛び散らせる。
 
 七色の光と、火の粉の光の中、メガシンカを果たした竜は挑発するように相手を見下ろした。
 
 
***
 
 
▼ハルシオンとサハムの現在の技構成などです。
 何か問題があったら言ってください!

※補足:ハルシオンがみらいよちを打っていますが、発動はまだです。
 
■サハム:ボーマンダ♂(スーパーボール)
【性格】むじゃき
【特性】いかく(メガ:スカイスキン)
【持ち物】メガストーン(ボーマンダナイト)
【技】かえんほうしゃ、ギガインパクト、じしん、ドラゴンクロー

■ハルシオン:シンボラー♀(モンスターボール)
【性格】おっとり
【特性】いろめがね
【持ち物】ひかりのこな(どろぼう後は未所持です)
【技】マジカルシャイン、おいかぜ、みらいよち、エアスラッシュ

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