壁としての役割【sideレフティア】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:アニーニケさん、アルメラさん、ルシオラくん
  
 
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 冷静に堅実に。お手本のようなバトルを。ジムトレーナーであるレフティア・ルミとして相応しい在り方であるように。その想いを技に乗せて、想いを声に静かに乗せた。
 あえて狙った相手の戦法を真似たものに対してもやはりアニーニケは動揺することなく次の一手を放つ。アイアンヘッドははがねタイプの技。こおりタイプであるテュッキュには効果は抜群だ。加えて回復として持たせていたオボンのみも食べられてしまった。 
 
「テュッキュ、まだいけますか?」
 
 レフティアの声に、ヴィティの視線。それらを受けたテュッキュは勿論だと言わんばかりに怒りの感情を無理やりに鎮めて構えなおす。その様を横目で一瞬だけ確かめてから、レフティアはすぐに意識を前に戻す。
 
「よそ見は禁物と言ったばかりで、同じことを味わう訳にはいきませんから」
「貴女らしい。しかしテュッキュはもうあと一撃でも技を喰らえばひんし手前。テュッキュとヴィティにはこおりタイプへの決定打となる技はありません」
「いいえ、アニさまは気づいていらっしゃるでしょう。ですからわたくしも隠しはしません」
 
 そうはっきりと告げてから手を軽くあげてヴィティへと指示を出す。しっかりと頷いたヴィティが両足に力を込めてひと鳴きすればまばゆい光があたりを照らした。マジカルシャイン。フェアリータイプの技であるそれは相手全体への攻撃であり、そして何よりあくタイプを持つルシオラには効果は抜群。
 
「セオリーにはセオリーを」
 
 アルメラの身体がルシオラを庇うようにわずかに前に出たのを見逃さない。ダブルバトルの真骨頂は互いをどうカバーし、高めあうか。そう思っているからこそレフティアは補い合うバトルを好む。それが何よりもチャレンジャーにとっての強固な立はばかる壁にもなると信じて。
 マジカルシャインが放たれたと同時に駆け出していたテュッキュはアルメラへとれいとうパンチで殴り掛かる。効果はいま一つ。それをわかったうえでするのは、凍らせて引っ張ることが目的なだけ。
 アルメラの身体へと命中し、張り付いた氷の手。テュッキュはそこに重さを重ねてアルメラの身体を引きずり倒す。先ほどどろぼうされたのが余程腹がたったのか、その勢いは今まで一度も見たことのないものだった。
 
「イレギュラーにはイレギュラーを」
「やりますねレフ」 
「ジムトレーナーとしてここで務めさせて頂いてから、わかったことがあったのです」
「ほう、それは?」
「セオリーだけでは、壁になるには相応しくないと」
「聞きましょう」
 
 互いに手持ち達に指示を出しながらの応酬。それは互いの手持ち達への信頼と関係が構築されているから出来る賜物だ。
 マジカルシャインが命中したものの、まだひんしにはなっていないルシオラが繰り出したれいとうパンチをうち弾くようにテュッキュもれいとうパンチで相殺する。もうマジカルシャインを打たせるものかとアルメラの放ったかなしばりは確かにヴィティの技を縛り付けた。
 
「挑戦者のトリッキーな戦法に対応してこその、ジムトレーナーだと思ったのです」
 
 だからこそアニーニケにバトルを依頼した。これからやってくるチャレンジャーたちを胸を張って迎えたい。そのためにはセオリーだけの礼儀正しいトレーナーではいけないのだと、己自身も進化をしたいと願って。
 バトルの合間に拍手音が響く。それを発しているのはアニーニケの手だ。微笑みのモノクルの向こうに覗く瞳は、どこか楽しそうで嬉しそうだとレフティアは感じた。真意はわからない、けれどもきっとアニーニケは喜んでくれているのではないかと妹であるレフティアは思う。そう思えるほどに長い時を過ごさせてもらったのだから。
 
「畳みかけさせて頂きます」
「こちらも受けてたちましょう」
 
 双方の手持ち達が後退して体制を立て直す。どちらとものトレーナーがほぼほぼ同時に声を上げた。このバトルを終わらせるための技を。

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