キラーダのみやぶる【sideキラーダ】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りました:キャティちゃん、ミランダさん

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 いつものように飯を強請って来たキャティに対して溜息をつかざるを得ない。ここで私のご飯を貰えなければどうせシャッルに強請りにいくのだ。それがわかっているからこそここで飯を渡した方がシャッルの手を煩わせずにすむ。
 
『あんたいつもそういうじゃない』
『ねぇーいいでしょーちょーだい』
 
 甘えた声でなおもしぶとく強請ってくるキャティに再び深い溜息を零す。ああもう仕方ないわね、と飯を差し出す。そうすればキャティは実にわかりやすく表情を明るくし、私が上げた飯にかぶりついた。
 こちらの様子を見守っていたミランダが少しばかり申し訳なさそうな表情をしているようなそうでないような。この子の食い意地の張り具合は流石に同情してやってもいいわねと思える。
 と思っていると玄関扉が開く音がした。この開き方は間違いなくシャッルのものだ。ぱっと身を起き上がらせて扉の方まで向かえば、やはりシャッルが帰ってきていた。
 
「ただいまキラーダ。ミラもキャティも、ああ、いつも通りやな」
「おかえりなさい」
「キャティはほんまよお食べるよなあ」
 
 私の頭を撫でてからシャッルはソファーへと腰かけた。即座にその膝の上に乗り上げれば、私の頭を左手で撫でてくれる。シャッルのそういうところが好きだ。偽物なんかじゃあ私が満足しないことをよく理解している。だから、好き。
 
「そうそう、ミラ」
「何かしら」
「ダグでお祭りやるんやて」
「お祭り……?」
「夏祭り。気分転換にでもデートする?」
 
 ネクタイを解きながらシャッルは職場で聞いたのだという祭りの話を続ける。祭りって品のない馬鹿も多く集まるからあんまり好きじゃないのよね。でもシャッルが行くなら話は別だ。どうするのかしら、と誘われているミランダを見上げた時だ。
 
「祭りて特別感あるやろ?それに美味いもん沢山あるで」
 
 その言葉にキャティがぱっと顔を上げた。待ってもう完食したの?早すぎる。強請るようにキャティは尾を揺らめかせながらシャッルとミランダの足元を歩く。なんて素直なのかしら、と思うが、こればかりは言葉選びが狡いシャッルのせいでもあると思う。
 今度は何を考えているのかしら。全くもって考えていることなんて読めない大好きなマスターを私は眺めた。
 
 どうせまともなことなんて一切として考えていないからこそ、好きで仕方がないのだ。


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