青の世界へ【sideリピス】

■お借りしました:ダイゴロウ(ゆめきち)さん、(お名前は出ていませんが)スイカさん


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 調査を終えて、暫くの時が経った頃だ。わたしはただ穏やかな色を讃える波を眺めていた。海はこちらに押しては引いて、ささやかな音を立てる。
 様々なことがあった。思い出すのに時を重ねてしまう程には沢山のことが。海のものから装いを普段のものへと戻し、空を見た。
 空は快晴。酷くその世界は、美しい。それだというのにわたしの心は一向に晴れそうになかった。


***


 ノアトゥンシティのジムの前までやってくる。水タイプの新人トレーナー向けのジム。ここのバトル形式はトリプルバトルだと聞いた。
 わたしの手持ちは四匹。ルルはまだバトル慣れしていないことを考慮し、あまり気は進まないがゼブライカを頭数に入れることとした。父のポケモンである彼の力を借りることはどこか卑怯な気がして複雑だが、それでもわたしの手持ちであることも確かだ。昨日ジムチャレンジへの同行を頼んだ際、ゼブライカも気にしないでいいとばかりに、わたしの頬に自身の頬を寄せてくれた。それがわたしにとっての救いだったのかもしれない。

 ジムの中へと足を踏み入れれば、水族館のような室内がわたし達を迎え入れた。青の光に包まれる世界は酷く幻想的で美しい。

「へぇ、こんな内装なんだな。洒落てんねェ」
「ユメキチはジム戦はしたことないの?」
「する必要がなかったからな」

 そう、と言葉を返すわたしの中にはひたすらに狡い、という想いだけが募っていた。いいや、別に狡くはない。狡くはないのだ。狡くはなく、ただ、羨ましいだけだ。
 少しばかり足早に歩いて、ユメキチから距離をとる。彼はそれを何とも思わないことだろう。
 
「こんにちは」

 受付に立っていた女性に声をかける。白髪の髪を二つに結い上げ、ゴーグルをつけたその人はこちらの姿を視認すると快活な挨拶をくれる。

「こんにちは!ジムへの挑戦ですか?」
「ええ。コランダ地方に来てはじめてのジムチャレンジなの。作法はよくわかっていないのだけれども……こちらのジムはトリプルバトルで合っているかしら」
「その通り!ノアトゥンジムのバトル形式はトリプルバトル。手持ちは三体ちゃんと揃っていますか?」
「勿論。……ノアトゥンジムへの挑戦をお願いするわ」

 まずはあなたと戦えばいいのかしら。
 そう問いかけながら、わたしは三つのボールに手を滑らせた。

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