つめたいこ【sideフォカロル・グリモア】

こちらの流れをお借りしています。

■お借りしました:メイジーちゃん、ララくん、ココくん
 
 
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 若さというものは危うくもあり、勇敢の象徴でもある。それは言い換えれば無謀とも言えるのだが、成長するにつれて挑戦するという心持が落ち着いてしまえばあの頃はよかったものだと懐古するものもいれば、当時を思い出して恥ずかしがるものものいる。
 
 目の前のキルリアの名前はララといったか。トレーナーのメイジーの手を安心させるようにしっかりと握りしめるのは、自らの心の安寧を保たたせるためでもあるのだろう。
 交渉の場というものは先に弱みを見せた方が敗北する。どのような場においても、余裕を欠いたものが遅れをとる。だからこそララも今こうしてめいっぱいの余裕を見せてこちらに交渉を持ちかけているのだろう。
 準備されたかのようなそれに、どれほどまでこの時を待ち構えていたのだろうと思う。打算的で聡くはある。それを行動に移す勇敢さと、愚かさもある。
 思考する。ただ、そうだな。素直さがなさすぎる。だからこそこのように言及されているような状況を作ってしまった訳だが。それもまた若さといえようか。
 グリモアをしっかりと見据えて真っ直ぐな言葉を紡ぐメイジーに、仲良くなりたい気持ちを前面に出してキマリスに飛びつきにいったココ。ララの代わりに全ての素直さを持ったような彼らを一瞥してから、フォカロルは答えた。
 
『君の成長の機会にもなるだろう』
 
 ぽつり、と告げたそれは遠回しな受諾であり、また、まだ若い彼のプライドに波を立たせるようなものだ。きょとんとした後、不満そうに僅かに歪められた表情に___やはり、若いなと思った。
 
 
***
 
 
 下げられた頭も、こちらに向けられる視線も。グリモアはただじっと静観していた。ララに手をしっかりと握りしめられながらメイジーが言葉を発する。震える声と真っ赤な顔に、彼女が努力して勇気を出していることだけはわかって、どうしてそこまで頑張っているのだろうか、とだけ不思議に思った。
 
「いいよ」
「えっ?!」
 
 不安に歪んでいた表情が驚きに包まれる。あっさりとグリモアの口から出たのは、フォカロルからすればわかりきっていた回答だ。そしてフォカロルはグリモアがこの後何と答えるのかも、何を思ってそう口にしたのかも理解している。
 
「好きにすればいい。俺も好きにする」
 
 グリモアは来るもの拒まず、去る者追わず。そんな精神の持ち主だ。だから別に一緒に旅をしたいというのならそれを断りはしない。ただしそれに寄り添うかといえば、別の話だ。メイジーが自分についてくるのも、バトルを横で見ているのだって問題はない。ただ、グリモアは好きに動くだけでありメイジーのために歩む速度を合わせるといったことはない。
 つまりは、ついてこられなかったら置いていく。そういう意味が含まれてはいるが、言葉が少なすぎるためメイジーに伝わっているかはどうかは不安だが、きっとララには通じているだろう。だからこそフォカロルは許可を出した。苦労して成長するのは、提案者であるそちら側だという意も込めて。
 
「ほ、本当にいいの?」
「うん。怪我はしないで」
 
 バトルを横で見ているのは問題ないが、バトル中はバトルに関係のない存在を気に掛けることは出来ないし、する気もないから。
 言葉足らずでよかったというべきだろうか。全てが自己責任になることを覚悟の上での許可は、あまりにも子どもらしくなくて、可愛げのないものだった。

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