卑怯者【sideラサーサ】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:ディンブラちゃん
 
 
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 真っ白な華。雪のように降り注ぐそれが肌に触れても熱で溶けることはない。それを嬉しいと思う反面、雪のように溶けてしまってくれたらいいのに。とも思ってしまう。
 
 バレンタインデーのお返しだと雪のような華を降り注いでくれたディンブラはバレンタインデーのお返しだと微かに微笑む。お返しなんていいのに、とも思うけれども好意は勿論嬉しいものだ。
 俺の頬を撫でていった白い花が地面に落ちる前に空中で受け止めて、まじまじと見てからもう一度ディンに視線を戻す。
 彼女は少しばかり緊張した面持ちでこちらの様子を伺っていて、そんなに不安そうにする必要などないのにと思うものの。それが彼女だとも思う。
 
『それは光栄だ』
 
 秘密の場所。それを俺にだけに明かしてくれる彼女に嬉しいと思う。
 リボンで作られた花冠。俺が贈った花をまとめたリボンを大切にしてくれていることにも、こうして身に着けてくれていることにも嬉しいと思う。
 可愛いディン。可愛い彼女。愛おしいと思う反面、__俺が俺を嫌悪する。
 
 翼を伸ばして、ディンの頬をやさしく撫でる。俺よりも小さい彼女の肌は、俺よりもやわらかいように思える。人間の男と女だと女の方が身体は柔らかいというし、ポケモンもそうなのかもしれないな。なんてことを考えた。
 
『ありがとう。嬉しい』
『……よかった』
 
 ほっとしたように柔く微笑むディンの頬に、白い花びらを寄せて。そうすればディンが不思議そうに俺を見上げた。
 
『なあディン』
『?』
『嫌だなって思ったら突き飛ばしてな』
 
 さらに首を傾げるディンの頬を花びらを持ったままの翼でもう一度撫でて、もう片方の翼で彼女の目をそっと覆い隠す。
 困惑した様子の彼女がそれ以上反応する前に唇を重ねて、すぐに離した。突き飛ばされるどころか殴られるかもなあなんてことを呑気に考えながら。
 
 
 
 
 
 ああ、やっぱり白い花は君の方が似合う。君は俺の方が似合うといったけれども、白い花は俺にはきっと眩しすぎる。
 そんな風に、俺は思ってしまって仕方ない。

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