Welcome to wonderland【sideリピス】

こちらの流れをお借りしています。
 
■お借りしました:スウィートくん
 
 
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 提示されていた逃げ道を見ないフリ。至近距離で覗き込んだ異なる色の宝石のような瞳は、出会った時から変わらないままのように見えて、全く異なる光を放っているように見えた。
 それが思い上がりでなければいいと、楽しげに初めて笑う彼の表情に胸が高鳴る。
 ああ、どうしてここまでどうしようもない程に落ちてしまったんだろう。そんな教科書にも書いていない答えは考えるだけ無駄だ。
 
 どうしてか嬉しそうにわたしとスウィートの手首にリボンを巻き付けたフェリシア。彼女がそこまでご機嫌な理由は生憎とわからなくて、でも釣られてわたしまで嬉しくなった。
 
「ビビ」
 
 ご機嫌なフェリシアにか、それともわたし達の様子にか。そわついていた様子を見せていたビビがフェリシアに後ろから抱きついて甘えるように擦り寄った。
 噛んじゃ駄目よの意を込めて名を呼べば、分かっていると言わんばかりにビビは笑ってみせる。少し不安だったが、ビビはやさしくフェリシアのリボンを甘く噛んでそれに包まるかのように身を寄せた。そんなビビに妹のように甘えられるのが嬉しいのか、フェリシアも顔を明るいものとさせる。そのやさしい光景に、こちらも自然と笑顔になってしまうというものだ。
 
 ちらりと横目でスウィートの様子を伺う。その人もビビとフェリシアのやり取りを見ている。先程の笑顔は錯覚だったのでは無いかと思う程に、今の彼の表情はいつものものだ。けれどもわたしは知っている。先程彼が見せてくれた笑顔を。
 
「スウィート」
 
 彼の方を向いて見上げて、名前を呼んだ。そうすれば最初の頃の態度はどこへやら、彼はこちらへと視線を寄越してくれる。離れろと言われて間もないことなど気にしないことにして、わたしはスウィートの手を握った。
 握った手の大きさ、見上げなければいけない身長差。わたしは子どもで、彼は大人。
 早く横に並びたいと、並ぶ時まで共に居てやると勝手なことを考えた。
 
「帰りましょう」
 
 ダグシティの彼の家へと。これを家主では無いわたしの方から言うのは少しおかしな話だ。けれども、家主もこちらと同じ意見なら否定はされないだろうと。
 
 繋いだ手を緩く振る。手袋越しにでもつたわるあたたかな人の温もりがやわらかくて、擽ったかった。
 
 
 
 選んだ道は選ぶべきものではなかったものだということなどいやという程理解をしている。
 けれども人生なんて紆余曲折あるもので、間違いのない道だけを歩き続ける存在なんていない。いる訳がない。
 寄り道や迷った方が、道端に咲く美しい花を目に入れる機会も澄み切った青空を見上げる機会があることだろう。勿論人によりけりではあるだろうが。
 わたしの場合は、そうだっただけのこと。
 
 迷い込んだ先でうつくしいものを、わたしはみつけた。

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