広報紙作成事業を考えてみる

静岡市の事務事業評価シートを見て、指標設定の妥当性を中心に感想をコメントします。
評価シートの説明はこちら

市長公室 事業№3 広報紙作成事業

1 概要

総事業費 5,733万円(事業費3,168万円+人件費2,565万円)3.1+1.5人工

アウトプット指標 ①広報紙の発行
         ②市総合計画の重点プロジェクトの掲載
アウトカム指標 市民意識調査「市政運営に関する関心度」

2 指標の設定について
(1) アウトプット指標① 〇
厳密に言えば、発行した総ページ数になるのでしょうが、16P以外のものをみたことないので回数で代用して問題ないでしょう。
   アウトプット指標② △  
回数だと1ページでも半ページでも1回なので、情報の総量がつかめません。タブロイド版換算のページ数あるいは紙面に対する割合を使うべきでしょう。ただ、これは細かすぎる要求かもしれません。この指標には別の問題点がありますので後述します。
(2) アウトカム指標 一見〇だが・・・?
本事業の究極の目的は、たしかに「市政運営に関する関心度」を高めることでしょう。しかし、市政PR事業をはじめこの指標に寄与する事業は他にもあります。又、何かしら争点となる市政上の課題があれば、市の行う事業とは関係なく、この数値は上がるでしょう。本事業のアウトカムを測る指標として「市政運営に関する関心度」は、他に影響する要素が多すぎて、適切なものとは言い難いのです。

3 アウトカム指標の3分類
某自治体の研修資料を見てみましょう(図1)。

アウトカムが時系列別に(短期、中期、最終)と3分類されています。

視点を変えて、政策体系から分類したのが、次の資料です(図2)。

図1の⑥=事務事業、図1の⑦,⑧=施策に対応します。

4 事務事業のアウトカム指標の在り方
図2が示すように、事務事業と言うのは施策のアウトカム目標を達成するための具体策です。施策目標をより具体化した目標群が設定され、それらを達成する手段として事務事業が実施されているのが、本来あるべき姿です。
事務事業評価シートに抽象的なアウトカム目標が設定されているのは、施策-事務事業の階層関係を見据えていない、いわゆる”戦略的”ではない事業である可能性が高いと思います。

5 アウトプット指標②の問題点
アウトプット指標②からアウトカム指標へのロジックモデルは次のようなものだと想像されます。

この類推を裏付けるように、平成元年度分の本事業の評価シートには次のような記述があります。

「静岡市第3次総合計画の重点プロジェクトを広報紙にほぼ毎月掲載し、昨年度よりも3%市政への関心度が高くなった」

このモデルの妥当性はさておき、アウトプット指標として採用されているのは、毎年6~7月に行われる市民アンケートの結果です。
アンケートの実施時期を見ればわかるように、アウトプット指標②は1/6-1/4しか、アウトカム指標に影響しません。

本当に影響が出るのは、来年度のアンケート結果なのです。これを表にすると次のようになります。

プロジェクトの掲載回数を増やした結果、関心が高まったと評価していますが、低下していたのが現実である可能性が高いです。
もう6年もこの単純ミスが放置され続けているのは、少なくとも広報課においては、評価が単なる穴埋作業に堕しているのを示唆しているように思います。