シェア
「なぁ、そこ退いてくれねぇかな」 塀の上。でっぷりと太った白猫を見上げて、オレは立ち往生していた。 猫は大きな瞳でじっとオレを睨んでから、大きな欠伸を一つ。 こいつらは基本的に、オレのような小さな玩具の言う事になど興味が無い。 「確か鉄斎……だったか? 頼む、近道なんだ」 名前を呼んでやると、鉄斎は少し驚いたようで目を見開くが、動きはしない。 無理に飛び越える事も出来るが、今は避けたかった。 電池が消耗している。有事に備えて、残量は減らしたくない。 (その