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【キー9】カラオケ

私には二大NGがあって、それがスポッチャとカラオケである。それぞれ、(運動・1)音痴だから、というのに起因する。

(↑「音痴」を共通因数として括り出したときの因数分解)

「サラリーマンって本当にカラオケいくんだ」って思ったよね

と、会社の先輩が言っていた。入社したての歓迎会の2次会でカラオケに連れて行かれたときに、サラリーマンのイメージ図がイメージ図に止まらないことを知ったらしい。

ジェスチャー伝言ゲームがあって、そのお題がサラリーマンだったとき、Yシャツ姿でマイクを握り熱唱する人と、その周りに座ってタンバリンを鳴らしたり手をメガホンにして掛け声をあげる人を表現しようとして、ひとりであたふたすることになる。 ←こうなる可能性はまぁまぁ高い。

私はサラリーマンとカラオケに行ったことはこれまで一度もないが、もし目の前でいつもの上司がジャケットを脱いで熱唱し始めたら、おおこれが、と思うに違いない。

あまりにできすぎたイメージ通りのものが、いざ目の前で現実におこなわれると、ふわついた気持ちになる。感動とかおどろくとかの前に感心がきて、一旦感情が流れてくるのを脳が保留している感覚。どう思うかは別にしてとりあえず脳内写真に撮っておけよ、と言われている気がする。

関連して思い出したことがある。高校の音楽の時間に、DVDで映画『オペラ座の怪人』をみていたら、怪人がクリスティーヌを地下室へ連れこみ歌い出すところで画面が止まった。僕たちの後ろに立って見ていた先生がリモコンのポーズボタンを押したのだ。そして先生は言った。
「これがあの有名なシーンだから起きてちゃんと見ておけ」

このケースに関しては止めるなよ、と思ったけど、こういうことを僕の脳もしているようだ。

無人島に持っていくとしたら

カラオケに誘われると→カラオケが苦手だと僕が言って→何で?と聞かれて→音痴だからと言うと→歌わないでもいいから来なよ までの一連がお約束になる。

誘ってくれる好意、ありがたい。それはそれとして、このお約束には続きがある。

〜いいから来なよ
→でも俺みんながうたう歌しらないんだよね

これが本当に申し訳ない。
人気ドラマとかMステとかTikTokとか見ないから、いわゆるメジャーで流行ってる曲がほんとうに分からない。瑛人の「香水」もだいぶ流行り尽くしてもう時代遅れ、くらいまできている頃に、少し前まで大宮駅の西口にあった「いろはにほへと」という居酒屋で流れているのを聴いたのが僕の初めての香水だった。

Mステを見ないといけない。プレイリスト「日本 トップ100」を聴かないといけない。と思う。だけどそれだけでは、

〜いいから来なよ
→じゃほんとに聞くだけね?それならいくわ 

という分岐を辿るには不十分だ。カラオケでは、世間の流行りとか関係なしに、カラオケで歌われるために生き残っている曲が覇権を握っているケースが往々にして存在する。それらも最低限サビくらい知っていないとただの置物になってしまい、楽しくないの?と気を遣わせることになってしまう。タンバリンも鳴らせない。

と思って頭を悩ませていたら、Apple Musicで「カラオケヒッツ」なるプレイリストを見つけた。さすがのApple。

水風船みたいなアートワーク

曲数が多い。125曲もある。しかも随時更新されるようでとても追いきれない。タイトルやアーティスト名はもちろん、聴いても分からない曲がほとんどだが、知っている曲もある。Lisaの「炎」とかバイト先の映画館で気が狂うほど聴いた。『鬼滅の刃』を連日上映していた頃の話だ。他にも石川さゆり「天城越え」は演歌にハマっていた中学生の頃に何十回と聴いてる。

にしても、僕はこれらの曲をあまりに軽視してきた。と聴きながら反省した。

無人島に流れ着いたときに、カバンの中にAKB48「ヘビーローテション」とか嵐「One Love」が入っている人は生き残れる気がする。カラオケヒッツの曲は体温を上げてくれるから。
僕の好きなスピッツとかNCT Dreamとかじゃ頼りない。同じく好きなLogicとか5lackみたいなラップも、東京の人混みをかき分けるときには頼もしい熱をくれるが、無人島だと空振りしてしまいそうだ。

いざという時に僕に熱をくれてサバイヴさせてくれる曲はなんだかんだでカラオケヒッツな気がする。二次会へついていく人付き合いの観点からも、カラオケヒッツ=生き残るための音楽なのかもしれない。

おまけ1 - 「カラオケヒッツ」の曲と僕

カラオケヒッツをきいていくつか思ったことや思い出したことなど。

広瀬香美「ロマンスの神様」

いわゆる懐メロは小学生の頃から好きだからこの曲も知っていた。
歌詞に「ロマンスの神様 どうもありがとう」という箇所があるのだけれど、この「どうもありがとう」があまりにうわべだけのお礼でよい。お礼したんだからいいでしょ、といい男と腕を組んでさっといなくなってしまう感じ、

Bump of Chicken「天体観測」

高校の軽音部が新歓で演奏していた。下手くそだったし、高校の体育館の音響じゃ何と歌ってるかもほとんどわからないので、歪んだメロディと途切れ途切れの歌詞をセットで括って「天体観測」のラベルだけ付けた状態のまま、23歳になってしまった。

AKB48「フライングゲット」

僕の小学校では5・6年生に委員会に入らなきゃいけなくて、僕は放送委員になって給食の時間に生徒がもってきたCDをかけるというのをしていた。こういうときにCDをわざわざ渡してくるのは、地元の野球クラブに入っているか放課後校庭でサッカーをやり続ける男子、又はそういう男子と仲のいい女子と決まっていた。
そういうわけで給食の時間は殆どGReeeeN「キセキ」かイナズマイレブンか、あるいはAKB48とKARAとE-girlsが順番に流れていた。

僕が5年生になって放送委員になりたてのころ、AKB48「フライングゲット」が流行って、僕の初仕事は誰かが渡してきたそれをかけることだった。
それで、僕ははじめてで調子はよく分からないけど細かい使い方をいちいち6年生に聞くのは面倒だったので、見よう見まねで再生ボタンを押した。そうしたら、とんでもなく大きな音量で学校中にフライングゲットが流れてしまったようで、4階にある5年1組の教室で給食を食べていた僕の担任が、わざわざ1階の放送室まで走って怒鳴りにきた。

石川さゆり「天城越え」

カラオケヒッツって、こういうのも含むんだ。

小学4年生〜中学生前半くらいまで、演歌や歌謡曲にはまっていた。初めて買ったCDは氷川きよし「きよしのズンドコ節」とジェロ「海雪」だった。

それくらいの時期のいつかの夏の自由研究課題で、僕は演歌マップというのを作成した。例えば「天城越え」なら静岡県の天城峠、森進一「襟裳岬」なら北海道の下端に、という具合に知っている演歌にでてくる地名をひたすら日本地図にマッピングしたもので、だから何、みたいな反応をうけた点ではいかにも研究っぽくて満足している。

その過程で細川たかし「北酒場」の北の酒場通りってどこだろうと調べたら、細川氏の出身地である札幌の、すすきのじゃないかという結果がでてピンを打った。すすきのってどんなところかと思って学校のPCとかで調べると、歓楽街という説明がなされていて、知識が追いついていない思春期の僕は好き勝手な妄想をしていた覚えがある。

宇多田ヒカル「First Love」

宇多田ヒカルは僕も好きで日頃きくので、カラオケヒッツに入っているのをみると嬉しい。特に「Distance」と「虹色バス」が好きなんだけど、これまた僕の大好きなpunpeeというラッパーが、「Distance」をサンプリングしてつくった曲「Local Distance 田中面舞踏会Remix」がイカしているのでよかったら聴いてほしい。

おまけ2 - ディズニー・ソング

あと、たまたまなのか何か事情があるのかもしれないけど、カラオケヒッツにディズニーの曲がなかったのは意外だった。日本語版でもなんでも、ディズニーの歌をカラオケで歌う人って藤井フミヤ「True Love」や氣志團「One Night Varnival」より少ないのかな。

この前『リトルマーメイド』をみてきたけど、Halle Baileyの「Part of Your World」、圧巻だった。
たしかに多くの人にとってカラオケできもちよく歌える代物ではないのかもしれない。

思えば無人島に遭難したとき助けてくれるのはAKB48じゃなくて、人魚だ。

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