プラトニックラブはある

太ったおばさん『出会って4光年で合体』

この漫画を読もうと思ったのは、YouTuber・morgenさんのラジオで言及されていたから。Twitterでバズっていたことがあるので存在自体は認知していたのだが、わたしはあまり漫画を嗜まないので読むまでには至っていなかった。しかし、morgenのラジオで「泣いた」などといった感想と、その後覗いたFANZAのレビュー欄での絶賛の声、あるいはその1つ「銃・病原菌・ケツ」というワードに釣られて購入するに至った。

先に『銃・病原菌・ケツ』とその次回作『銃・病原菌・膣』の著者:渡辺麦のパートが大好きすぎるため、その愛を語らせてほしい。

以下はかなりネタ要素のネタバレを含むので閲覧注意かも

当然ながら『銃・病原菌・ケツ』の圧倒的インパクトもツボ。加えて、娘の稲がイノシシの頭に驚いたシーンでショックを受けた麦が、娘への振る舞いを顧みた「ピーターラビットをせがまれたのにピーターシンガを読み聞かせてしまった」が大好きすぎる。そんなわけない。あとは13日寝ず食わずして著した大著『テロリスト監禁調教』が販売サイトに「ロリ」と「監禁」が同時に含まれていたために不適切と判断されてBANされたというエピソードで大笑いしてしまった。

この時点で全384ページ(!?)の半ばほどなのだが、神話的な荘厳さやヒロインのえおんの妖艶さよりも、正直トンデモおもしろ展開とシュールなユーモアセンスに心をつかまれており、本当にこの漫画で泣けるのか……?という疑いを孕みながら読み進めた。

こんなにも合理性や世界の秩序を超えた、愛に満ちたセックスが存在するんだ。
性欲で結びついたはやととくえん。くえんは上位の存在に司られた、作り出された生命体で、避妊具が手に入らないように管理されていた。この避妊具が手に入らないことを理由に、彼らは身体を重ねなかったのだが、避妊具が与えられなかった理由はむしろ真逆で子供を作ることを望まれていたのであるが。そうして出会った頃・はやとの学生時代も、再会したのち・はやとの成長後も身体を重ねず、その上再会したのち、つまりは4光年先では成長したはやとが成長せず出会ったときそのままの姿のくえんに性的な行為を求めることさえ不安で、プラトニックな生活を送っていた。
くえんは「人を淫靡に誘う存在」としてこの世に産み落とされたのだが、はやととくえんの関係は遂に心からの関係になっていたんだなと、最後のセックスシーンで本当に涙が出そうになった。
その甘いセックスと、直後に無機質な宇宙船が迎えに来る対比に少々寂しさを覚えたが、二人の愛が二人だけものじゃなく、世界を巻き込んだ壮大なものであることを感じさせざるを得なかった。

これは思想書、宗教書。新たな価値観を手に入れることを可能にする、わたしの血肉となる物語だ。

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