姿

 錆びついたような話をします。
もっと可愛い人形を作ったら?と人形が完成するたびに家族に言われます。毎度の事です。ワタシは可愛いと思って作っているのですから、個々の好みの相違に過ぎないのは明らかです。
しかしこの「もっと可愛い」には主語が省略されています。家族当人が可愛いと思う、もしくは多くの人が可愛いと思うという事を言っているのです。このうち後者が今回書く内容に関係があります。
今更こんな事を書くのは近頃こういった事を思う機会が増えたからです。他でもないVRSNS内でのアバターの話です。

 過去に可愛いアバターになって欲しいと言われた事が幾度かありました。親しみ易いアバターになって欲しいと言われた事もあります。その度にワタシは心の中で平身低頭謝っているのです。そして思うのです「ごめんなさい、ごめんなさい、やっぱりワタシは自分が気に入った姿で居ること以外出来ません」と……
親しみ易さを求められる場で、多くの方が親しみ易いと感じる事が難しい姿を通すならば、それはとんだ無礼者であるとワタシは思っています。その場にふさわしくない姿で乗り込み周囲に不快を撒くのであれば、それは権利の主張などではありません。一種のドレスコードとも言えるでしょう。それは重々承知していますので、ワタシは気に入った姿で居る事とその場を去る事を天秤にかけてどちらかを選ばなくてはなりません。
そして、もちろんワタシは気に入った姿で居る事の方を選ぶのです。自分に合わせて場の空気を変える?……そんな凶暴な事はワタシには到底出来ません。

 アバターに限らず誰に頼まれもしないのに創作などをしている者にとって、自らの時間を削って創ったモノは結果がどうあれ多少なりとも気に入っているモノだと思います…少なくともワタシはそうです。VRSNSに何を求めるかがユーザー次第である事は利用者ならば日々感じている事でしょう。ワタシにとっては創ったモノを発表するための一つのフォーマットである様です。今のところ創作物を販売するつもりもありませんから、気に入った姿で彷徨くためのフィールドに他ならないのです。

 どうも、ワタシは自分の創ったモノ達が多少なりとも可愛い様です。ですからその姿が他者に不快感を与えるならばワタシはその場を去るだけなのです。頑固、偏屈と言われるのは構いません……事実ですから。稚拙と言われるのも構いません……世には素晴らしい創り手の方々が大勢いらっしゃいます。創作と言っても大仰なものではありません。周囲からは稼業にもならない中途半端な拘りに見えることでしょう。それでも自らに与えられた命の時間を消費して行う程度に創り手にとっては価値のある事です。その結果出来上がったモノも本人にとっては相応の価値があるのです。

 こんな思いを胸にVRSNSを彷徨っているユーザーも稀には居るのだという事を心の隅にでも留めておいて頂ければ幸いです。


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