競艇と俺
「馬鹿野郎!そこでなんで握るんだよ」
あぁ…また舟券がただの印字された紙になった。もう今までいくら負けただろうか。投票サイトを見るだけでも相当額負けている。
でもなぜか競艇は辞められない。
この泥沼にハマって絡めとられ毎月給料をつぎこみ、結局は何も残らない。
分かっちゃいる。俗に言うギャンブル中毒。
多分世間一般の人はギャンブル中毒と言えばパチンコを思い出すんじゃないかな。
正直俺から見ればパチンコは優しい世界。
スロットの最低出玉率だけで見ても95%はある。でも公営ギャンブルは75%だ。これだけでもハンデがでかいのに、ここから勝つと思うとかなり勉強しなきゃいけない。
ここまで考えて俺の理性が語りかけてくる。
「もう辞めれば?時間の無駄だしお金勿体ないよ。」
分かっちゃいるさ。でももう脳が快感を覚えちまってる。進入の駆け引き、スタートの瞬間、1マークの攻防、道中の競り合い。
その全てが魅力的で、こんなに熱く、楽しく、悔しい、悲しい、いろんな感情のジェットコースターは競艇でしか味わえないんだ。
そして今日も握りしめた舟券を見て当たりが無いことを再確認して、ゴミ箱に捨てる。
まさに人生の地獄だ。クズだって言いたいんだろ?心配すんな。自覚してる。
ちょっと昔のことを話す。
俺は元々ギャンブルで生計を立てていた。
言わゆるスロプロと呼ばれていた。
勝つためならなんでもやった。ハイエナしたり、設定狙いしたり、仲良い人から台もらったり。
月の収入は平均すれば70万前後だった。
確実に期待値以上だったから、今その反動で引きが弱いのかも知れんが、田舎じゃいい暮らししてたんだよ。
それがひょんなことから捕まって、出てきた時に真面目に働こうなんて考え出したんだ。
今思えばそこから人生は変わったんだよな。
営業をやり始めた俺は、なかなか契約が取れず不貞腐れ、自分が1人じゃ何も出来ないことを知った。そこから人に素直になったんだ。ノウハウを吸収して日々成長した気がした。契約も取れてきて、気がつけばスーツが似合う兄ちゃんになっていた。
そんなある日社長と上司が喧嘩して会社は分断された。元々独立志向の強かった上司だから納得していたが、今度はどっちに着いて来るんだと迫られた。
俺は選べなかった。だからそこから立ち去った。
そこからいろんな経験をして今に至る。
競艇はそのいろんな経験の中で出会ったんだ。
競艇は人の物語。
俺はそう呼んでいる。
それは選手それぞれの物語も、舟券を買う側の物語も、開催される競艇場の物語も、全てが合わさって1つのレースを作っているんだ。
まさに1つの人生みたいだろ?
過去に何も出来なかった人間が、先輩から学び成長し、独立していく。まさに人生そのものであり、自分の生き方と似てるなといつも勝手に思っている。
どんな選手にも、どんな施行者にも、舟券を買うどんなギャンブル中毒者にも、いつも人生を重ねて見ている。
だから競艇は楽しいんだよ。
あの日社長と上司にどっち選ぶんだ
そう迫られた時選べなかった自分は
今は自分の意思でお金を託す選手を選んでいる。
皮肉なもんだがだいたい絞って外れるんだ。
これも人生だ。
結局社長と上司、両方と仲良く出来ているんだ、人生と例えるなら絞るのは良くないのかもしれないな。
まぁ何が言いたいか、忘れちまったよ。
そうだ。クマホン。
たまには当選してくれよ。な?
今回も外れたけどよ。
今も引きが溜まってるって思い込んでるんだ。今度でかいの頼むぜ。
ふぅー長く書いて腹減っちまった。
PayPay入金…出来ねぇな
さっき下関に全部入れたの忘れてたぜ。
しゃーねーラーメン食って寝るか。
END