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揺さぶられているこの時代を生きるために

この一ヶ月ほど、体調が不安定で、元気がない日々を過ごしました。周りの人達も不調な人が多いようです。

あなたはいかがでしょうか。

オリンピックという祭りの前半が終わり、コロナの感染急拡大や、天候の不順、自然災害など、世の中は揺れているようです。

個人の身体や心も揺さぶられているように感じます。特に最近は、この揺れが大きくなっているようです。

友人の尼僧さんが、「自然の働きはそのまま仏のはたらき」と言っていました。

そういう意味では、今揺れている人、元気がない人は健全といえるのではないでしょうか。ただ、揺さぶられる感覚は、頭にとっては、心地よくありません。それが極端な方向へと人を駆り立てることがあるように思います。



先日、夜ウォーキングしていると、ランナーが走ってきました。見ると、マスクをしていません。そのまま私の横を走り抜けていきました。その瞬間、「私は、マスクをつけて周りに迷惑をかけないようにしているのに」と、少し腹が立ちました。

引き続きウォーキングしていると、立て続けに3人のランナーがみんなマスクをせず、走っていきました。これに対して「ランナーたちは一体何を考えているのだろうか。自分さえ気持ちよければいいのか」と、ランナー全体への不信感と批判が心をよぎりました。普段でしたら、ここまで考えがエスカレートすることはあまりありません。

ここで大事なのは、ランナーのことではなく、自分自身の状態に目を向けることです。

もし、次のようなことがあるとしたら、これも揺さぶりによって起きているのかもしれません。
コロナ禍での我慢が人への攻撃になる。
自分の心身の不調が苛立ちになる。
怖さによって、違和感を覚える他者を排除しようとする。

自分の状態に気付くだけで、フラットに戻りました。



インターネットのニュースに目を向けると、さまざまな批判や攻撃が溢れています。オリンピック開催直前には、大会関係者による「いじめ」に関する過去の発言の問題が噴出。最近は、元プロ野球選手の張本勲さんの女子ボクシングに関する発言やメンタリストDaiGoさんの生活保護受給者への発言への批判。

普段はネットの批判記事は見ないのですが、最近、目に入ってくることがあります。もちろん、これらの発言自体にいろいろな問題がありますが、こうした発言への世の中の反応が気になりました。

たとえば、記事のコメント欄に賛否があふれかえっています。それぞれの主張には、それぞれの理があります。理があるだけに、お互いの主張の溝は深まっています。

また、ワクチン接種についても、さまざまな意見があります。ワクチンへの賛否は論争にとどまらず、一部では、お互いへの誹謗中傷にエスカレートしています。世の中の分断が深まっているように見えました。



混迷を深める中で、いかに生きるか。



分断されているのは、社会だけではありません。会社や家族などのコミュニティで、切り離れているように感じる人も増えています。そして、孤立感がさらに過激さを誘発することがあるのかもしれません。

ですが、本来、議論は、一方的に攻撃するものでも、正義で相手を切り捨てることでもありません。考えが違う人を完膚なきまでに叩きのめすものでもありません。



先日、アメリカに住んでいる友人と話をしているときに、議論をする上で「Agree to disagree」という言葉があるということを聞きました。意見の不一致を認めるという意味です。

彼は、世界を飛び回るビジネスマンです。中国、インド、韓国など、世界中の人達と話をしながら議論しなければいけない立場のため、ギリギリの交渉や強く説得しなければならない場面もあるそうです。このとき、「Agree to disagree」の精神が大事だというのです。

意見の対立があるときに、どうしても折り合いがつかずに、いつまで経ってもお互いの意見が平行線をたどることも少なくありません。そういうとき、相手を攻撃するのではなく、「意見の違いを認め合う」という姿勢を持てるかどうかが議論の質だけではなく、その後の仕事の成否をも左右するそうです。



相手を尊重する大事さは、誰しも分かっていると思います。ただ、それはあくまでも、理性が上手く機能していれば、です。

今ある孤独、寂しさ、恐れは、私たちが思っている以上に影響があるのではないでしょうか。その反動が、攻撃や誹謗中傷、差別、いじめに向かっているように見えます。揺さぶられていると、攻撃的な感情に理性が押し流されてしまうことがあるものです。なぜかというと、人間には、偏る習性があるからです。

禅では、いかに偏らずに「中道」を歩めるかを修行しているといえます。だから、こういう揺さぶられているときこそ、坐禅をするのがいいのではないかと思います。

ただ、坐禅をする際、注意が必要です。禅の師匠である藤田老師は「坐禅は1人でしない方がいい場合がある。適切な指導者から学ぶことが肝要だ」とおっしゃっていました。それは、自分の内側に入りすぎてしまうなど、適切ではない方向に向かってしまうことがあるからです。自分を閉じる坐禅と、自分を開く坐禅があるのです。

坐禅をするとき、目をどのようにするか、ご存知でしょうか。

目を閉じると、心が落ち着きます。しかし、禅では、基本的には「半眼」といって、目を薄く開けた状態で坐ることを指導されます。自分の体験から感じることですが、目を閉じると、自分の内側に入りすぎてしまうことがあるのです。

内側への意識で坐り続けていると、心地よくなっていきます。それが癖になると、坐禅で自分の心地よさだけを求めるようになることがあります。そして、自分の心地よさを邪魔するような他者や周りの存在を否定し、拒絶するようになることもあるのです。これは、閉じた坐禅の副作用です。

坐禅は本来、外側の世界とつながるものです。先日、雨の音を聞きながら坐っていると、身体が落ち着いていくのが分かりました。ところが、外側の世界には、自分の中の心地よさを邪魔するものもあります。

それでも、好き嫌いで選り好みするのではなく、すべてを受け入れ、すべてのものといっしょに坐る。

これが開いた坐禅です。

開いた身体から開いた心が生まれます。開いた身心から生まれる叡智があります。

理性は、身心がつながっているから上手く機能します。禅の修行では、「身心一如」を大事にします。身心が切り離されている状態では、頭だけが暴走してしまうのです。

坐禅は、身体と理性とのコラボレーションとも言えます。身心を両方使うことで、あなたに起こっていることに気付くことができるようになり、静けさと落ち着きをもたらしてくれます。



これは、コーチングに求められていることでもあります。最近は、目標を達成することよりも、フラットな状態でいられることを求めているクライアントさんが多いように思います。

私は、コーチングのセッションも坐禅と同じように、身体と心を開くことだと考えています。心身がつながっている状態で言葉を発することによって、自然に身心の叡智が現れてきて、フラットな状態になるのです。

また、セッションでの進め方やテーマ設定についても、禅的なアプローチをとっています。一般的なビジネスコーチングでは、テーマを事前に考えてくるようにクライアントさんに求めます。

私のセッションでは、クライアントさんがテーマとしたいことがあれば、それでもいいですが、テーマを最初に決めることは、ほとんどありません。真のテーマは、対話を重ねる中で、自然に現れてくるからです。身心を両方使うと、自然に叡智が現れてくるのです。



少し話がそれましたが、揺さぶれている今の状況では、身体と心を総動員する工夫が必要です。

今、あなたは閉じた状態でしょうか。それとも開いた状態でしょうか。

身体と心や頭は、調和がとれているでしょうか。それとも頭に偏っているでしょうか。

もし、閉じていて、頭に偏っていれば、いろいろな瞑想アプリがあるので、ぜひ試してみてください。また、こういうときこそ、山や海に行って、全身で自然のエネルギーを感じるのもいいと思います。

繰り返しになりますが、「どうするか」よりも、まずは「何が起こっているのか」に気付くことが大切です。

禅の中道は、偏らないことではありません。人間は偏るものです。大事なのは、偏っていることに気付くこと。世の中や誰かの間違いを指摘する前に、まずは自分自身の状態をチェックしましょう。偏った状態での指摘は、さらに混迷を深めてしまいます。

自分に起こっていることに気づければ、おのずからフラットな状態に戻れます。自分がフラットな状態に戻れると、おのずから、この世界の見え方も変わってきます。



今回も読んでくださり、ありがとうございました。

今回のテーマは、言葉にするのに、とても苦労しました。私も揺さぶられている中で、フラットな自分で書けているか、自分に問いかけながら、何度も書き直しました。

かなり慎重に言葉を選んだつもりですが、もし不快に思われた方がいらっしゃったら、申し訳ありません。遠慮無く、ご意見をいただければと思います。

私の場合は、身心の不調を感じている中でも、食堂で身体を動かすのが、心身のバランスをとることにつながっているようです。禅では、掃除など身体を動かすことも「作務」という修行の一つで、静かに坐るのも修行、動くのも修行です。

身心のバランスをとるのは、結構、難しいものです。私にとって、こうやって言葉にすることは、自分を開くことであり、世界とつながることであり、自己点検でもあります。



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