見出し画像

「ぬくもり」を感じるとき 心の温度とは

コーチングをさせていただいている社長さんの言葉が、最近やけにキツいなあと感じていました。

もともと経営への思いが熱い人ではあるのですが、熱さとはなにか違うのです。

たとえば、今までは、問題があったとき、どうすればよいのかスタッフといっしょに考えていたのですが、できない原因にこだわって責めるような表現になっていたり。もともと結果に対しての意識は強かったのですが、早く数字を出すことに焦っていたり。

なにより表情が険しく、言葉の端々にトゲがあるのです。自然に社員との関係にも影響が出ていました。

こういうとき、鍵となる社員と3〜4人でのグループコーチングを行います。

社長は、問題点をどんどん指摘していきます。社長のボルテージがあがる一方で、社員達は静まりかえっていきました。そんな社員の態度に、社長はさらに不満を募らせていきます。

その場は凍り付いたような空気になっていました。

この会社は、この数年いろいろな問題があり、新たな体制がスタートしたばかりでした。

会社全体に以前のような士気がなくなっていました。それは幹部社員も分かってはいたのですが、目の前の仕事に追われて、なかなか有効な手を打てずにいました。

士気ややる気が低いというのはよく使う表現です。どの組織でも士気ややる気をあげるために、試行錯誤されていると思います。しかし、結構、難しい。



そもそも、やる気が上がるというのは、どういうことなのでしょうか。私は、「心の温度」が関係しているように感じます。

先程、場が凍り付いていたと申し上げました。

実は、社長の心が冷えきっていたのです。

社長は、なんとか社員の心に火を付けようともがいていたのですが、まさか自分の心が冷えきっていたとは、気づいていませんでした。

心が冷えていると、どんなに良いことを言っても、言葉が冷たいもの。また、正しいことを言っていても、冷たいので伝わりにくいです。

心の温度を左右する要因はいろいろありますが、ひとりぼっちだと心は冷えていきます。

本来、人は様々なつながりの中で生きています。それがコロナ禍で、つながりが減っている中で、社会全体の温度が下がっています。個人も組織でも、温度が下がってくると、問題が増えてきます。



ちなみに私は「ひとりぼっち」がテーマです。若いときから大勢の場にいるほど、「ひとりぼっち」を感じるのですが、そういうとき、心は冷え切っています。また、傷ついたとき「ひとりぼっち」になります。周りと壁を作ります。誰とも関わりたくなくなります。

今、あなたの温度はいかがですか?あなたの組織の温度はいかがですか?

温度と言われて、よく分からないという人も多いと思います。

ただ、人は無意識のうちに温かさや冷たさを感じているのです。

「冷たいな」と感じる人はいますか?その人といると、どんな気持ちになるでしょうか。身体はどう反応するでしょうか?

私の場合は、緊張で身体が固くなり、心も閉じるように思います。

では、「あったかいな」と感じる人はいますか?恐らく、その人といると、あなたもあったかい気持ちになるのではないでしょうか。自然に笑顔になり、素直な気持ちを話していたりします。

温かい人と一緒にいると、幸せな気持ちになります。



先日、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』の再放送を見ました。サンドイッチマンさんの回でした。彼らは高校の同級生で、コンビを組むきっかけになった話をしていました。

富澤さんが部活から帰るとき、駅にとめていた自転車がなくなっていたそうです。1人で自転車を探していたら、先に帰っていた伊達さんが戻ってきて、一緒に探してくれたそうです。

富澤さんは、親の都合で転校ばかりしていました。もともと人見知りな性格だったみたいで、ほとんど友達はいなかったそうです。まさに「ひとりぼっち」だったのかもしれません。

そして、高校を卒業し、別の道を歩んでいた2人ですが、コンビを組もうと富澤さんが伊達さんを誘ったそうです。 人見知りの富澤さんから誘ったというのが面白いですね。

今でも1人の仕事は得意ではないそうです。「二個イチ」だというこの2人の関係って、あったかくないですか。それが彼らの温かい芸風につながっているのかもしれません。



「ぬくもり」という言葉があります。私は「ぬくもり」が好きです。

2年前、家をリフォームしたのですが、床を無垢材にしました。裸足で歩くと、とても気持ちがいいです。木にぬくもりを感じます。コップもお箸も、木の素材が感じられるものが好きです。木に触れていると、心が落ち着きます。

また、近所の自転車屋さんがハンドメイドで作ってくれた自転車に愛着を感じていて、もう10年以上乗っています。手作りにも「ぬくもり」を感じます。

そういえば食堂でも、手作りを大事にしています。またお味噌汁が好きです。お出汁にぬくもりを感じるのです。

スターバックスでコーヒーを飲むときには、陶器のマグカップを選んでいます。陶器にぬくもりを感じるのです。

そう考えると、私の周りには「ぬくもり」がいろいろあります。「ぬくもり」に心惹かれて行動しているようです。

木と触れているとき、手作りに触れているとき・・・

「ぬくもり」は、周りの自然や人と交わっているときに自然に顕れるのではないだろうか。今のところ、そう仮説を立てて、いろいろ実験しています。

一方で、プラスチックの箸やストローには、「ぬくもり」を感じません。また、コンビニで売られているおにぎりは美味しいですが、「ぬくもり」は感じません。

と、ここまで書いてみて、「ぬくもり」って、本当にそんなものなの?という疑問が湧いてきました。



以前、2日ほどご飯を食べていなくて、本当にお腹が減っていたとき、コンビニのおにぎりを美味しく感じました。お米一粒一粒を味わっていました。

ということは、「ぬくもり」は対象物によるのではなく、そのときの私の状態にもよるのかもしれないとも思います。無意識に選り好みしている自我が「ぬくもり」を邪魔しているのかもしれません。

あることが当たり前になっているのかもしれません。

では、人との関わりにおいての「ぬくもり」はいかがでしょうか?

ちなみに、妻といるとき、普段は「ぬくもり」を感じていません。一緒にいるのが当たり前になっているのでしょう。逆に、長期の出張にでかけていたり、喧嘩をして冷戦状態になっているとき、「ぬくもりがなくなった」ことに気づきます。

大切なものがなくなったとき、はじめて「ぬくもり」の存在に気づくのです。



「ぬくもり」とは、なくなったときに気づくもの。



「つながり」「まじわり」の働きが起きているのが「ぬくもり」と申し上げました。この「ぬくもり」の働きは、当たり前になってしまいやすいもの。あるいは、贅沢になれば、いとも簡単に感じられなくなってしまうのです。

「ぬくもり」がないのではなく、「ぬくもり」が感じられるかどうか。

お米一粒に「ぬくもり」を感じるのが、禅における修行かもしれません。大事なものがなくなったときに気づくのではなく、あるときにその存在に気づける身心を育む。

そう考えると、「ひとりぼっち」の自分は、「ないもの」を追い求めていたのかもしれません。人のことを羨んでいました。自分に足りないものばかりを嘆いていました。そこにあった「ぬくもり」に気づけていなかったのです。

おかげさまで、最近は「ひとりぼっち」という冷たい心になることは減ったように思います。一方で、身近な存在を大事に感じることは増えたかもしれません。

私の場合は、クライアントさんとの時間は「ぬくもり」です。

「ひとりぼっち」で苦しんできた私は、世の中の「ひとりぼっち」に寄り添う人でありたい。サンドイッチマンの伊達さんのように、いっしょに探す人でありたい。それがコーチとしての原点かもしれません。

なによりもクライアントさんと一緒になって探しているとき、私も「ぬくもり」を感じるのです。

本来、どの人も「ぬくもり」があるはずなのです。もし今あなたが、「ぬくもり」を感じられていれば、何気ない日常という奇跡にちゃんと気づけています。

一方で、「ぬくもり」が感じられないという方は、「失う前に大事なことに気づきなさい」というメッセージかもしれません。

あなたは、どういうとき「ぬくもり」を感じるでしょうか?
そこには、あなたの大事なものがあるはずです。

忘れていることはないでしょうか。

少し自分に問いかけてみてくださいね。



ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

今回のテーマは言葉にするのが難しかったです。何度も書き直しました。残念ながら、まだ上手く言葉にはなっていません。未完成でお伝えするのは、読者に失礼ではないだろうか。今回は配信を見送ろうかとも思いました。

ところが、「ぬくもりとは、なくなったときに気づくもの」というキーワードが浮かんできました。よい原稿、悪い原稿とジャッジしている自分がいました。手が冷たくなっていました。また「ひとりぼっち」の方に向かっていたのです。

未完成でも読んでいただきたいという気持ちが起こりました。完成したときに自己満足はあるかもしれませんが、「ぬくもり」はなくなっているかもしれない。

未完成かもしれませんが、なにかのヒントになることを祈って送り出します。




月に4回メルマガ「禅メンタル通信」を
発行しています。

禅を人生にいかすコツやヒント、禅とビジネスコーチング、禅とスポーツのメンタルトレーニングなどについてお伝えしています。

無料ですので気軽にご登録ください。

↓詳細は下のリンクをクリックしてください。
https://www.zen-mental.com/mag/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?