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苦手意識とどうつきあうか? 区別しないプロセスメンタルトレーニング

前回の記事で、コンテントは区別する性質をもっていて、プロセスは区別がないということをお伝えしました。

前回の記事はこちら
「素直になれないあなたへ 区別しないという生き方」

今回もコンテントとプロセスについてお伝えしていきます。

実は、スポーツにおいても、この区別をしないプロセスからのアプローチは、すごく大事です。今回は、プロセスメンタルトレーニングについてお伝えしていきます。

陸上の幅跳び選手は、プレーの流れを、スタート、助走、踏み切り、跳躍、着地から考えています。

また、あるプロゴルファーは、ドライバー、アイアン、アプローチ、パッティングと使うクラブや状況によって、プレーを分けています。

このようにプレーをパートで分けるのは、どのスポーツでも当たり前のことでしょう。それぞれの精度を上げていくことで、全体のプレーのレベルアップを図ろうとしているのです。

この区別したプレーは、部分をつなげて全体を作ろうとするアプローチです。すべて事柄でプレーしている状態といえます。

事柄つまりコンテントには、得意・不得意や、好き・嫌いが必ずついてきます。

たとえば、幅跳び選手の場合は、うまく踏み切れないという悩みを当初持っていました。踏み切り板を意識してしまい、そこで減速してしまうのです。

踏み切り板を意識するほど、踏み切りが上手く合わないことが怖くなります。



プロゴルファーの場合は、ドライバーへの苦手意識がありました。狭いホールに立つと、ミスをしてしまうのではないかという悪いイメージが湧いてきて、身体が動かなくなるのです。

また、パッティングでは、バーディーチャンスがやってきたとき、入れたい気持ちが強くなりすぎて、思うようなストロークが出来なくなります。また、1メートルほどの短いパーパットでは、絶対に入れなければならないという意識が強くなり、パターのヘッドが出なくなるのです。



少し専門的な話になりましたが、すべての状況に共通しているのは、事柄つまりコンテントでプレーしているということです。

スポーツでも仕事でもそうですが、コンテントでタスクを区切るのです。これはタスク(テーマ)達成型アプローチです。

タスク達成のために、コンテントの言葉を使うのも、言葉の特性の一つです。目標を明確化するのには有効ですが、同時にさまざまなジャッジや好き嫌いというさまざまな意味づけがついてくることを理解しておく必要があります。

上手くいっているときは、どんどん好きになりますし、逆に嫌悪や苦手を感じはじめると、それはさらに強化されるのです。



どのスポーツでも、調子が悪い選手を見ると、無意識のうちに区別が多くなっています。コンテントの言葉が多くなって、部分へのこだわりが強くなっています。

コンテントのプレーは「得意」も生み出しますが、同時に「苦手意識」も生み出します。だから、得意も苦手もコンテントをプレーしているという点では、同じ次元なのです。



プロセスメンタルトレーニングでは、意識を向ける方向が違います。周りに起こっていること(風、音、景色)、自分に起こっていること(身体、感情)を感じていきます。

風とつながる。景色とつながる。音とつながる。心とつながる。身体とつながる。


ここであまり専門的な話になると分かりにくいと思いますので、私の事例でトレーニングの内容をイメージしていただければと思います。

私は朝早く起きるのが苦手です。これは若いときからでした。

最近、朝の目覚めが変わってきました。

朝目覚めるときも、コンテントの目覚めとプロセスの目覚めは違います。

コンテントの目覚めの場合、「もうこんな時間だ。早く起きないと間に合わない」と朝起きることと戦います。眠気に勝っても負けても、起きるのに力がいります。また、起きられたとしても不機嫌になることも多いです。

一方で、プロセスの目覚めの場合は、「布団が温かいのが心地よい。目が開いて光が入ってきた。身体の中を血が巡り始めた」ということを感じるのです。

私のように朝が苦手な人は、殊更に朝起きることを目的にしている傾向があります。一方で、苦にならない人は、自然な流れで目が覚めています。

プロセスに気づきを向けることで、自然に目が覚めて身体が動き始めます。

この違いが分かるでしょうか?



少し話がズレたので、スポーツに話を戻します。区切らないプレーの鍵は、プロセスにあります。

いかに「テーマ」ではなく、自分と周りに起こっていることに気づけるかがポイントです。

プロセスからのアプローチを続けていると、いろいろな引っかかりが見えてきます。これはテーマを実行するうえで発生しているコンテントとコンテントの切れ目のようなものです。

プロセスは、ずっと切れ間なく流れています。その切れ目を埋めていくのが、プロセスです。

幅跳び選手の場合も同じです。プレーの中で、いろいろな切れ目があるのです。特に、スタートが重たいと感じていました。

この重さは何か?

プロセスを感じるために、あえて別のスタートを試してみました。先日はウォークインというスタートにトライしてみました。ウォークインというのは、言葉の通り、セットアップして構えるのではなく、歩いてきてそのまま止まらずスタートする方法です。

このとき、プロセスを感じ続けてもらいます。

セットアップとウォークインを試してみる中で、重心の位置に違いがあることに気づきました。セットアップだとしっかり地面を蹴ろうして下に重心があるのです。確かに安定感はありますが、重さを感じます。

一方で、ウォークインだと重心が高いのです。その結果、踏ん張ることなくスムースに助走に入れました。しかし、どこかフワフワもしていました。

大事なのは、どちらがよい悪いではないということです。両方のプロセスを身体で感じてみます。交互に練習を重ねる中で、だんだんスタートという区切りが消えていきました。

そしてあるとき顕れてきたプロセスの言葉は「遊び心」でした。

あなたも経験があると思いますが、遊び心で何かをしているとき、そこには区別も切れ目もありません。

セットアップのスタートだと、真面目になりすぎていました。これはコンテントのスタートだったのです。

コンテントのプレーだと、どうしても正解を探そうとします。あるいは、AかBかで悩みます。Aを選んでもBを選んでも、コンテントのプレーという意味で同じです。

正解を探しているときこそ、プロセスからのアプローチが有効です。プロセスからのアプローチをしていると、AかBかではなくなってきます。区切りが消えていくとき、プロセスからの気づきが現れてくるのです。




ちなみに、話は変わりますが、ある陸上選手はマジックが趣味です。自分でマジックを作ったりしていて、プロ級の腕前なので、もはや趣味の領域は超えています。

この選手が尊敬している世界的なマジシャンがいるのですが、その人は、マジックをしないそうです。

その選手を含め、ほとんどのマジシャンは、どうしてもマジックをしようとするのに、そのマジシャンは、いつでもどこでもマジックが飛び出すのです。「マジックになっている」と表現していました。

マジックをしない。マジックになっている。

これは、自分とマジックの間に区別がない状態といえます。



陸上選手の場合、スタートの特別感が薄くなっていき、結果的に、スタートで感じていた重さはなくなりました。そして気がつけば、踏み切りへの怖さもなくなっていたのです。

プロセスのアプローチは、まさに禅の修行の方向といっしょなので面白いです。また少し、禅とスポーツの関係が見えてきました。



ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

今回はスポーツとプロセスについてお伝えしましたが、実は仕事においても、プロセスを大事にしたい人は案外多いのです。

しかし、現代はコンテントの社会。特に仕事では、プロセスを出す機会も環境もありません。

そもそも自分のプロセスは何かが分からなくなっている人も多いです。

本当はプロセスを大事にしたいのに、そこは無視しながら日々仕事を進めざるを得ないというのは、かなりの苦痛を伴います。

いかにプロセスを仕事に取り入れていくか。

次回は、仕事におけるプロセスからのアプローチについてお伝えします。




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