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ZEMAITISの魅力 6

・12弦ギター


1965年からロンドンの郊外で個人ギター・ルシアーとして製作活動をスタートさせたトニー・ゼマイティスですが、当初は思うようにギターが売れず、生活に追われる時期もありました。

ようやくギターが売れた日は、妻のアンと手を取り合って喜びのダンスをしたそうです。

クラシックから始まったギター製作は、60年代末まではフラットトップの製作がほとんどでしたが、当時としては珍しい12弦モデルを数多く製作しています。

トニーが趣味の延長として50年代に初めて製作したギターは一般的なクラシックでしたが、「2本目に製作したのは大きなボディの12弦ギターだった」と本人が語っています。

実はトニー自身も12弦ギターのサウンドが大好きで、自分のライブ活動でも自作した12弦を愛用していました。
(そんなトニーのライブをなんと若き日のエリック・クラプトンが観客として観ていました!)

当時12弦ギターはまだ珍しい存在で、そんなギターを積極的に製作するトニーは、製作家の中でもユニークな存在だったでしょう。

60年代後半に製作されたトニーの代表作である、エリック・クラプトンのスーパー・ジャンボ・アコースティック12弦、通称「イヴァン・ザ・テリブル」(2004年に開催されたクリスティーズ N.Y.の 「クロスロード・ギター・オークション」にて約3,000万円で落札)は、世界で最も有名な12弦ギターとして知られています。

また、あまり知られていませんが、クラプトンはそのイヴァンをオーダーする前にもトニーが製作した12弦アコースティックを中古で入手していました。
(ブラインド・ファイス→ブラインドフェイス時代にクラプトンがその12弦ギターを手にしている写真が残っています)

さらにジミ・ヘンドリックスが1973年公開のドキュメンタリー映画『ジミ・ヘンドリックス』の中で、ゼマイティスの1960年製12弦アコースティックで
ソロ演奏しているシーンは広く知られています。

一般的にアコースティック・ギターのサウンドホールは円形ですが、ゼマイティス・ギターは円形とは限りません。

楕円形や三日月型、D型、ホタテ型、そして良く知られているハート型など、さまざまなデザインがあります。

トニーがサウンドホールの形状に拘るのには、実は理由があります。
彼はあるインタビューで「サウンドホールの形は音作りに関係している。
特にレコーディングの時は、丸いホールじゃない方が良いサウンドでレコーディングできるだろう」
と語っています。


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