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元国税が相続税の書面添付制度が本当に税務調査防止になる効果があるのか解説します

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この記事の監修者:元国税OB税理士 石井聡
 国税専門官として相続税の査察調査や内部担当まで広く資産税実務に従事する。退職後、相続専門税理士事務所を開業し、都内相続専門税理士法人の外部顧問も務める

1 書面添付制度とは

 書面添付制度とは、税理士法第33条の2に規定する書面添付制度で、税理士が税務当局に対し、税理士としての計算根拠を説明した書類で、税理士の委任状(税務代理権限証書)と一体になって提出する書類のことです。

2 書面添付制度の効果

 書面添付制度は、国税庁が税理士に対する地位向上のため、創設された制度と言われており、この書面がある場合には、自宅での税務調査(実地調査)を税務当局が行う場合には、「意見聴取」という税理士からの聴き取り手続きを行わなければなりません。
 そのため、巷では、税務調査の歯止めとなる効果があると言われております。
 果たして本当なのでしょうか。

3 書面添付制度の本当の効果

 書面添付制度がこのような手続きを踏んでの自宅での税務調査となることから、効果があると言われております。
 この点、元国税の立場から見ると、相続税の書面添付制度の効果は、一応言われている通りの効果はあるが、絶対的なものではないと考えます。
 その理由を効果がある場合とない場合で分析していきます。

4 相続税の書面添付制度の効果

 相続税の書面添付制度の効果が出る場面として次の3つの場面が考えられます。

① 相続税の税務調査
② 相続税の税目
③ コロナ渦の税務調査

5 ①相続税の税務調査の特殊性から書面添付の効果がある

 相続税の税務調査は、法人税や所得税と異なり、税務調査官がある程度目星をつけた状態で調査に来る傾向が高いことから、意見聴取手続きで、その目星を確認してそこで終了したいという心理的傾向があります。つまり、他税目ではほとんど効果のない書面添付制度でも相続税の税務調査では効果が高いです。

6 ②相続税の税目で書面添付効果がある

 相続税は、法人税や所得税のような帳簿となるものがなく、家計簿や日記といった不確定的な書類が多く、調査が難しい税目といえます。そのため、申告書の作成過程において被相続人の家庭事情を良く知っている税理士から話を聞いて自宅での税務調査を省略したいという税務当局側の思惑があります。つまり、他税目と異なり、相続税の税目の特殊性から書面添付の効果が高いです。

7 ③コロナ渦においての書面添付の効果がある

 コロナ渦の特殊性として対面の調査が制限されていることから、なるべく納税者と接触したくないと税務当局が考えています。
 この場合、書面添付制度を用いた申告書に対しての修正申告は、意見聴取段階の修正申告と扱われ、過少申告加算税が免除される効果があります。

8 相続税の書面添付制度の効果がない場合の理由

 相続税の税務調査を選ぶ立場としては、書面添付があるなしでは、選定していないことが挙げられます。
 したがって、それ相応の理由がある場合には、国税税務署は相続税の税務調査を行いたいと考えているため、意見聴取は通過的儀礼となり、自宅での税務調査は通常通り行われます

9 意見聴取を通過的儀礼としないための方策

 税理士としての立場向上のための制度であるため、その趣旨を調査官に説明することや自宅での税務調査では納税者の身体的心理的負担が多きすぎることを調査官に説得力を持って説明するほかありません。
 なお、国税庁が出している事務運営指針を知らない調査官もいるため、指針を無視して税務調査を行おうとする調査官には注意が必要です。
 事務運営指針は、下記のページをご参照ください。




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