『100日後に死ぬワニ』のラストをシナリオ理論の観点から予想。ワニの一生はバッドエンドで終わる。
自分だけひそかに楽しんでいるつもりが、気づけばフォローしている人たち、相互たち、現実の知人たちみんながワニの一生を追っていた。
『100日後に死ぬワニ』はテレビでも取り上げられるようになり、もはや国民的コンテンツと化している。
作者のきくちゆうき氏のTwitterアカウントはフォロワーが132万人。単純計算すれば、Twitterの国内ユーザーの約3割、国民の100人に1人が読者ということになる。
最終回を控え、多くの読者の期待を背負った作者のプレッシャーは相当高いに違いない。
なんせ「ワニがかわいそうだから作者をブロックした」という人まで現れているのだから、下手なオチを飾れば炎上に発展することもありえる。
ネットでは「死ぬのはワニではなくヒロインのワニ子さんじゃないか?」とか「友達のネズミさんが実はワニを救うためにタイムリープしている」なんて考察を目にする。
ワニが死なないオチを予想、というか希望している読者が目立つ気がするが、残念ながらワニが死ぬことは1日目の時点で既に示唆されており、おそらく覆ることはない。
シナリオ創作理論に則って考えれば、ワニは確実に死ぬ。読者がいくら生存を望んでいても死ぬ。
ワニ生存ENDの他に、死に方についての考察もよく見かけるが、実はワニの死に方はこの物語では大したウェイトを占めていない。どんな死に方だろうと結末には大きな影響がないのだ。
では『100日後に死ぬワニ』がどんな結末を迎えるのか、シナリオ理論の観点から語ってみる。的中率は映画の場合9割の確率で当てることができたので、よくある無茶な考察とは一味違う。
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シナリオ理論…なんとも胡散臭い響きだが、面白い物語を作る方法というのは何十年も前から研究されており、本屋に行けばその手の参考書が多数並んでいる。
誰もが「起承転結」という言葉を耳にしたことがあるはずだ。いうならああいうのがシナリオ理論。
ビジネスの場でも応用されており、いまやシナリオ理論は創作活動の枠から飛び出て活用されている。
残念ながら理論に沿って創作しても駄作が生まれることはあるし、必ずしもずべての名作を理論に当てはめられるとは限らないのも事実。
長くなるので省略するが、『100日後に死ぬワニ』の物語は理論的な展開をしてるので、理論を用いて結末の展開を予想できる。だから今回披露する考察には結構自信を持っている。
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ネットの講座サイト、参考書、他にどこでも、必ず物語は変化を描いたものと書かれている。
変化を描くのはシナリオ創作の大前提で必須の要素。高い評価を受けている物語は必ず何かの変化を描かれている。特に主要人物の心の変化が描かれることが多いし、そうするのが推奨されている。
物語のスタートでは変化が生じる前の姿、ラストでは変化を終えた姿がきっちり描かれる。
スタートでキャラが泣いてれば、ラストでは笑う。
何かが生まれれば、何かが死ぬ。
不幸であれば、幸せになる。
戦っていれば、平和になる。
要するに、スタートとラストでは、特徴的な要素が逆転するのだ。
映画は特にそれがわかりやすく描かれている場合が多い。好きな映画のスタートとラストを思い浮かべ、人物や環境などをよく比較してみれば、面白いくらいに逆転した描写になっていることに気づくはず。
バッドエンドでも同様だ。不思議なことに、ちゃんと「変化」が描かれていれば不幸な結末でも客は満足感を得られる。
「物語は変化を描いたもので、スタートとラストでは何もかもが逆転する」ことを念頭に置いた上で、改めて『100日後に死ぬワニ』の1日目を読み返してほしい。
『1コマ目』
ワニが笑っている。
『2コマ目』
ワニが一人で黙ってテレビを視聴している。
『3コマ目』
ワニがテレビを見ながら微笑する。
『4コマ目』
ワニが笑う。
1日目から特徴的な要素を抜き出すと、
・ワニが感情表現している
・ワニが楽しそうにテレビを見る
・登場人物はワニだけ
これらの要素を逆転してみると
・ワニが感情表現しなくなる(死)
・ワニは何かに楽しそうに見られる
・登場人物が大勢になる
こうなる。
この事から、きたる100日目では、ワニ子さんやネズミくんやモグラくんに看取られながらワニが息を引き取る画が浮かんでくる。仲間たちは悲しい顔はしまいと笑顔でワニくんを送り出そうと涙をこらえている。
最期の瞬間、ワニは幸せな空気の中で穏やかに息を引き取るのだ。
1日目の4コマ目でワニはおおいに笑っているから、100日目の4コマ目ではワニが事切れて、仲間たちの涙がドバーッ!と溢れ出しているかもしれない。
普通過ぎて拍子抜けするラストかもしれないが、最後の最後で物語は激動しないのでそういう物だ。
ワニくんは幸福を感じながら死ぬ。これならワニくんに感情移入している読者たちも納得するはず。
思い返せばワニくんの日常はたまに事件があったとはいえ平坦で、無駄に時間を過ごしていると感じることもあったが、結果的にワニくんの一生は幸せに満ちたものとなった。そんなワニくんを見て我々読者は「私はワニくんのような幸せな終わり方ができるのだろうか…」と考えてしまうのである。
結局ワニくんが死んでしまうという点ではバッドエンドだが、どんな死に方であっても不幸な物語だったとは思わない。きっとそんな結末になるはずだ。
いや……もしかしたら、ワニは惨殺され、その様子を仲間たちが笑って見ている内容になるかもしれない。
7日目に登場したワニくんと不仲の保護者なんかが怪しいんじゃないかな。仲良くなりたいっつってたけど、まだ関係は好転してないし、物語後半はワニくんと仲間たちの関係性にフォーカスされているから、今更保護者が介入する余地はない。だから不仲が解消されることはないだろう。ワニくんの死には保護者も関わってる。保護者の手で殺されるのかも?
とにかく、ワニくんはなんらかの理由で仲間たちに嵌められ、殺されてしまうのだ。時折、意味深な様子を見せるネズミくんもワニくんの死に関与しており、彼が殺される日を知っているけど、実は乗り気じゃない。けど、ネズミくんの力ではどうにもならない。
最後は、1日目4コマ目のワニくんのように、仲間たちが大笑いしながら幕を引く。無残な状態のワニくんを前にしながら……。
ラストでのワニくんはスタートと違って不幸極まりない状態だから「物語は変化を描いたもので、スタートとラストでは何もかもが逆転する」シナリオの前提を考えればこっちのが理論的に自然な結末といえる。
残り数日でワニくん殺害計画が本格的に始動し、死が急激に現実味を帯びていく。そして、抗うすべなくワニくんは殺されてしまうのだ。これだ! 『100日後に死ぬワニ』の結末はこれだ!!
……よくある突飛な駄考察になってしまった。
シナリオ理論が~とかビッグマウスぬかしたが、創作については超素人なので、私なんかが見るに堪える結末を導き出せるはずが無い。
大人しく、ワニくんがどんな結末を迎えるのか楽しみに待つとしよう。
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