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純文学と称するものをカタッパシから貪り読んでいます。多分文学の話しかしないと思います。

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最近の記事

【東大2023国語第一問】 顔を隠すもの、別人たり。

はじめに コロナによるマスク着用の急増に添えた一問であろうか、評論文なので普段小説の考察をしている身としては触れない分野、早く言えば専門外なのだが、いかんせん東大の問題というのは小説の分野においても有用なものの見方を促してくれるから、見てみないわけには行かないという興味本位が勝ってしまった。出典は𠮷田憲司「仮面と身体」。  ただし諸般の都合で全文をここに掲載するのを避け、必要なところを引用して、私の言葉を以て、その有用なところとやらの要旨の説明を試みる。 結論 例によっ

    • 【東大2021年国語】第四問 漱石は子規に何を思ったか

      前置き 羅生門の構造解釈を文字に起こすのに多少時間がかかりそうなので、漱石の話に触れておきたいと思う。いまは受験シーズンということで、受験生の方々に当たっては大変頑張っていただきたいところ。  国語において、とりわけ東大国語においてよく言われるのが、国語第四問で満点を取るのが不可能である、という暗黙の了解だか都市伝説だかわからぬ非常識な常識である。これがとにかくムズい、という声が挙がる。界隈では「人生経験が必要」だの、「作問者の頭が必要」だの「満点はいらない」だの何だの言

      • 芥川龍之介『羅生門』を深く考えてみる  第三

         前回の記事はこちら。 その五 色(続きの続き)  白  既に白の話は次のようにした。  小説内での該当箇所は次のようである。  まずは再び封建主義という目線からこの文章を見ることにする。次のことを疑問に思われたい。 老婆がエゴイズムに、そう簡単にのめり込むだろうか?  前回のおさらいをしておくと、老女が来ている檜皮色は濁ったエゴイズムの象徴で、それは闇や黒い髪のようにどす黒い、腹黒いしたたかな内容であることを説明した。  これを全く否定するのは芥川のテーマに

        • 芥川龍之介『羅生門』を深く考えてみる  第二

           以下は前回の続きです。初めて読まれる方は前回の内容をご一読いただけるとわかりやすいです。  それからこの文字数があるのに、目次は一つしかありません。紺という色とそれにまつわる話をするだけで本記事が終わってしまいます。目次の故障ではありません。<(_ _)> その五 色(続き)   紺  紺について目立つところから挙げていくと次の例が挙げられる。  下人の紺の服について、ここで原拠である『今昔物語』を一通り考察…と言いたいところだが、アイニク現代人にとっては非常に読み

        【東大2023国語第一問】 顔を隠すもの、別人たり。

          芥川龍之介『羅生門』を深く考えてみる 第一

          前置き 文学は多方面から読み取られなければいけない。この「多方面」というのは、僕が考えうる限りでは「作者の人生」「文学的比喩や表現」「他の著書」「同年代の小説」「師弟関係」などなど。せっかく文学を読むのならこれくらいは意識したい。これはそれぞれに一貫した共通点が見いだされ、まるで一本のシナリオのようにそれぞれがきれいに連なっているからである。そしてそう見えるように、作者が書いているからである。  僕が初心者に授業をするとすれば、必ず最初に大きめの声でこのように言うだろう。最

          芥川龍之介『羅生門』を深く考えてみる 第一