特殊詐欺(受け子、出し子)を始めようとしているあなたへ。
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特殊詐欺(受け子、出し子)を始めようとしているあなたへ。

まずはじめに。

「やめた方がいい、絶対。」

どこかでこの記事を知り、上記のように私が一言書いたところで、あなたは気にもとめないことだろう。

悪いことなのは理解しているし、悪いことを犯す覚悟があり、何よりも、「すぐにでもお金が必要だから」受け子や出し子をやろうとしているんだ、そういう気持ちではないだろうか。

気持ちは十分過ぎる程わかる。何より、私自身が「そういう気持ち」で手を出してしまったからだ。そんな私だから、はっきりと言える。

「やめた方がいい、絶対。」

気にも止めないあなたでも、こうしてこの記事を読んでくれているのであれば、まだ手を出すことに対して悩む余地があり、不安もあるのだろう。考えを改めてくれる可能性がきっとある、そう考え、限られた時間の中、この記事を書くことにした。

もう一度書く。私もお金に困り、あなたと同じように仕事を探し、受け子や出し子の仕事に手を出したのだ。「高額な報酬」に釣られて。

そう、そして私は「逮捕」された。今はほんの僅かな保釈期間中の身である。

まずはこの記事を読んで、決めてほしい。

2019年X月、私は現行犯逮捕され、長い警察署での勾留を経て、先日まで拘置所にいた。​現在は、判決までの間の保釈申請がやっと通り、実刑に備えて身辺整理をしているところだ。数百万円の保釈金を家族に頭を下げ出してもらい、身柄の引受先も何とか決まったので保釈は許可されたが、全員がそのようにいくわけではない。申請が通らず、保釈金を借りることができる「保釈保証協会」にもNGをくらい、出れないまま、1年以上勾留されている人を何人も知っている。

私自身、一時的に娑婆に出られたことで、思い出づくりがしたいわけではない。この後、まず間違く確定するであろう「実刑」に備え、身辺をすべてリセットするために出してもらってはいるが、娑婆に出て待っていたのは、自分が想像していた以上に厳しい現実だった。


私がどんな人間で、どのように逮捕されたのか、まずはお話させていただきたい。

仮名で恐縮だが、ここではZDHと名乗らせていただく。30歳の男・独身だ。大学を卒業し、それなりの会社にそれなりの収入で勤めていたのだが、ある家族トラブルから、精神病を患い、仕事を辞めてしまった。無制限と言える量の酒にお金を使い込む日々が続いた。当然収入が絶えている以上、お金はなくなる。正直「死んだっていいんだ」とさえ思い込んでしまっていた。

借金もたんまり作り、家族に頼み込むも、無心が続いたおかげで、本当に必要な場面で断られてしまう。そんなダメな人間というものに成り下がってしまった。大学も出て「それなりの」会社に入っていても、これだ。

支払い能力のなくなった私は「簡単に」お金を作る手段を探すことになった。

「友人には頼れない、家族にも頼ることはできない、自分自身でカタをつけて、またもとの生活に・・・いや、それ以上の生活を送るんだ!」そんな風に思い込んでいた。精神薬も飲み、頭のネジが飛んでいた自分のことが、自分のことであるのに、今は理解ができない。


Twitterで、#高額報酬 など、稼ぐネタがありそうなタグ検索をする日々が続いた。気になる投稿があった。

「受け・出し、報酬10%、簡単な仕事です。DMください」
受け?出し?よく分からないが連絡をとってみる。

すると、すぐにレスポンスがあった。

「詳しくはテレグラムというアプリでやりとりします。ダウンロードして、IDを教えてください。」と言われ、何も考えずアプリをインストールし、IDを伝える。今度はテレグラムに素早く返事が来た。

「Twitterの者です。本人確認のため、身分証の写真と、その身分証を手にと持って、ご自身の顔と一緒に自撮りして送ってください。ちなみにはじめてですよね?」

もちろん。「はい、受け・出しって何ですか?」

「ブラックな仕事なのは承知されていますか?受けというのは、我々が指定した家を訪問いただき、カードや現金を受け取る仕事です。また、出しというのは、受け取ったカードで、近くのATMからお金をおろす仕事です。」

ドキッとした。

すかさず、「我々のチームでは、今まで捕まった人はいませんし、主婦も隙間時間にやっていますよ。100万円おろしたら、あなたは10万円もらうことができます。1日あたり200万円から300万円を平均でおろしますから、1日30万円です。いかがですか?」

1日30万円・・・主婦もやっている・・・何より「捕まったことはない」・・・。

「頭のネジが飛んでいる」私は、すぐに「やらせてください」だ。
運転免許証、それに免許証と自分の顔を撮ったもの、2点を送り、しばらく待った。すると具体的な仕事の話になった。

「スーツ、黒縁メガネ、ビジネスバッグ、それと革靴、マスクもですね。」用意する必要のある物が伝えられる。ここまではすぐに用意できそうだ。さらに「あと、封筒を10枚、ポイントカード10枚、ハサミ。」何に使うのか、最初はよくわからなかった。
これらは「カードのすり替え」に使う。ハサミは使い終わったカードの処分用だ。

翌日から早速私は「仕事」をすることになった。金融庁の職員になりすまし、訪問をするらしい。
朝10時に指定された駅に向かい、「指示役」から連絡が来るまで、ひたすら待機となる。とにかく、待つ。

夕方になり「今日はだめでした。また明日お願いします。」と連絡が来たら、その日は終了。
数日間はそんな日々が続いた。だが、それではお金が入らない。なんのために毎日待機しているのか。

そう思っていた矢先、「今から住所を伝えます。すぐに向かってください。」

遂にきた。

「通話状態のままで、バッグに携帯電話は入れておいてください。近くに着いたら教えてください。」

ドキドキする。

支持されたままに、バッグに携帯電話を押し込み、タクシーに乗り込む。住所を伝えて近くのコンビニで降ろしてもらえるように、運転手に伝えた。駅からはそんなに遠くはないようだ。毎回、駅からは近い場所だった記憶がある。

住所近くのコンビニに到着する。イヤホンマイクを耳に着けて「指示役」に話しかけると、「金融庁のスズキという名前で訪問をしてください。まずは家の前まで向かっておいてください。こちらが合図したら呼び鈴を鳴らすんですよ。」そう私に話しかけながら、指示役はどこかに電話をしている。

今から訪問する先の「被害者」となる人物と会話をしていたのだった。

「はい・・・今向かっておりますので、すぐに着くかと思います。はい・・・はい・・・」電話をしながら、私に小さな声で「呼び鈴を鳴らしてください」と伝える。

心臓が止まりそうだ。

言われたとおり呼び鈴を鳴らす。

「あ、多分その呼び鈴、スズキが着いたのかもしれません。このまま電話は繋いでおいてよいので、ご対応をお願いいたしますか?」愛想の良い声で、被害者を誘導する「指示役」。玄関から優しそうなお婆さんがでてくる。

「スズキです。」

と伝えると、お婆さんの手からすぐにキャッシュカードが2枚出てくる。
私は、待機中、事前にポイントカード2枚を入れた封筒を用意するように指示されており、その封筒を隠した状態で、空の封筒を被害者に見せ、

「ここに、ご自身でカードを入れていただけますか?」と伝える。

その上で、「申し訳ありません、封印のため、銀行印か実印を目の前で教えていただく必要がありますので、お持ちいただけますか?」そうお願いをすることになっていた。

「あ、わかりました!待っていてくださいね。」と、すぐに印鑑を取りに私の前からお婆さんは目を離した。その間に、ポイントカード入の封筒と「すり替え」をする。

気づかないお婆さんはポイントカード入の封筒を自分の手で閉じ、封印を押す。自分でカードを入れ封印をするという安心感があるのだろう、その封筒を被害者に渡し、「大事に保管してください」と伝えると、「本当に助かりました」と言って、私を見送ってくれた。

苦しい。書いている今も苦しい。

指示役に「終わりました」と伝えると、近辺のATMの場所が伝えられ、そこに向かう。

「マスクを必ず着けてください。暗証番号はXXXXです。携帯電話は通話状態のままで、50万円分、20万円2回、10万円1回に分けてお金をおろしてください。その後、ATMを離れたらまた電話に声をかけてください。それまでは何も話しかけてはいけません。」と、矢継ぎ早に指示が来る指示役も急がなくてはいけないと、焦っているように感じた。

指定されたコンビニに入る前にマスクを着用し、ATMに行く。高齢者から騙し取ったカードを差し込む。「引き出し」、「20万円」、「暗証番号XXXX」。20万円がATMから出てくる。もう一度20万円、最後に10万円。もう一つのカードも続けて行う。20万円、20万円、10万円・・・・。機械的な作業である。
100万円の現金を手にして、封筒にしまい、すぐにコンビニを出る。

「お疲れ様です。報酬の10万円を抜いてもらい、残りを回収します。XX駅のトイレに行ってください。」心臓が止まりそうだ。とにかく急いで電車に乗る。駅のトイレに着くと、個室に入り、10万円を抜く。報酬だ・・・。残りの90万円を分け、待機していると「今から回収役が行きます。ノックを5回されたら、扉の上から90万円を渡してください。明細も一緒に。」

言われたとおりトイレで待つ。とにかく長く感じる。怖い。

15分程すると、隣の個室からノックされる。トン、トン、トン、トン、トン。上を見ると、手がこちらに伸びている。すぐに封筒を渡した。すると手は引っ込み、個室から出ていく音が聞こえた。

「お疲れ様でした。今日はこれで終わりです。明日も頑張りましょう!」

終わった。手元には10万円。こんな簡単に。10日やれば1日一件であっても100万円だ。私は目の前のお金を見て、更におかしくなった。今でもこの時のことを覚えている。
「明日は朝、今日のカードでまた下ろしますので、カードが生きていれば、また10%の報酬ですよ!毎日新しいカードが増えたら、どんどん1日の報酬が増えるってことです。」怖さより、お金が手に入る楽しみが生まれてくる・・・。

「また明日、よろしくお願いします。」

私はそうやって1ヶ月で1000万円以上、高齢者からお金を騙し取った。
1ヶ月で100万円の報酬だ。


3ヶ月程経ったある日、いつものように支持された家に向かうと・・・。

「今日は金融庁の山田でお願いします。」

「分かりました。」

家の近くで次の指示を待つ。すると、路地から制服を着た警官が出てくる。

「まずい」

そう思った。指示役に、

「警察です。どうすれば・・・」。

「逃げてください。」

私は逃げ出そうとした。しかし反対側にはすでにパトカーと数人の警官。一対一どころか、十対一の状態で挟まれている。なぜ、、、いつのまに。

「殴ってでも逃げろ」と言われたが、逃げようもなく、そのまま職務質問を受け、携帯電話を取られてしまった。なんと言っても電話を返してくれない。1時間ほど粘っていると、どんどんパトカーが増えていく。疲れ切った私は、パトカーに乗り込んだところで、私は「緊急逮捕」された。

「乗らなきゃいいのに」と、緊急逮捕の流れを知っている方々は言うかもしれないが、そもそも私にはすでに「手配」がかかっていて、さらに今回の高齢者は詐欺に気づき、事前に通報していたため、どうしようもなかった。後日見せられたカメラの映像を見れば、それが「私」であることは、一目瞭然。今のカメラ技術はすごい。マスクなんて意味はない。そうして、私が行った受け子、出しこの全てが判明していくことになった。2019年春のことである。

指示役はもちろん姿を暗ました。面会があって助けてくれるとか、私選弁護士が飛んでくるなんてことはなかった。彼らからすれば、私は一つの駒に過ぎない。またSNSで人を募れば良いだけなのだ。


携帯電話も押収され、接見禁止となり、誰にも連絡ができないまま、私は警察署の留置施設に半年間過ごした。事件に対しての再逮捕や追起訴が一つずつ行われていくため、時間がとにかくかかるのだ。

自分で言うのもなんだが、私はこれまで、とても真面目に生きてきた。そんな自分が独房で半年間過ごすことになり、不安や緊張は凄まじいものだった。

もちろん家族には警察から連絡がいったが、何もなかった。要するに愛想をつかれて、縁を切られた。

2019年末、私の身柄は拘置所に移された。一旦、全ての追起訴が終わったためだ。「一旦」と書いたのは、拘置所に送られても、新たに事件が発覚すれば、また警察署に逆戻りになることもあるからだ。(逆走と呼ばれている。)特殊詐欺については、逆走が多い。

受け子や出し子は、比較的留置施設にいる期間が長くなる傾向がある。1年間いるという人も少なくない。拘置所では、雑居房に入った。そこで同様の事件で捕まった人とも話す機会はあったが、いわゆる「初犯」と呼ばれる真面目で普通の人がとても多い。
明らかに悪そうな人たちは、覚醒剤の使用や所持で捕まっていたりするが、そういった人は初犯なら、執行猶予判決が多い。だが、例えそれまで真面目に生きてきても、初めての犯罪でも、受け子や出し子の特殊詐欺は一発実刑がほとんどだ。3年か4年、刑務所に行くことになる。全てのお金を被害者に返すことができれば、その限りではないようだが、それができるなら、受け子や出し子などしない。

「あいつの方が自分よりどう考えても悪いことをしているのに」と思ったところで、そういうものだ。世間的にも、特殊詐欺の厳罰化の流れがとても強くなっている。「高齢者を騙して金銭を奪う」この字面を見たって、どれだけ恐ろしいことをしているか、冷静になれば分かることなのだが・・・。

ちなみに刑務所がどんな所かは、全てではないが、以下の本を読んでみると分かる。

もしも刑務所に入ったら - 「日本一刑務所に入った男」による禁断解説

刑務所なう

私自身、まだ判決を受けているわけではないから、刑務所のことはわからない。ただ、今こうして保釈されているのは、家族から「全てを精算しろ」と言われ、自己破産し、家を引き払い、物をすべて捨てるためで、すぐにまた拘置所に戻り、数カ月後には、刑務所に行くことになるのは間違いない。

出所したら、できるだけ早く被害金を返したいという気持ちもあるが、被害者の方々は高齢だ。受け取ってもらえるかも分からない。

「刑務所で耐えるだけ」と思っているなら、それも間違いだ。日本は特に木厳しいが、「前科がつく」というのは大変なことだ。もちろん、ホリエモンこと堀江貴文氏のように、前科があろうと成功を続ける人もいるが、犯罪の性質も違い、「高齢者を騙した」という、詐欺や窃盗というのは、世間からどう見られるか、想像してみてほしい。前科がつくとどういったことになるかも、調べて見れば分かる。自分だけではなく、家族にも影響があるので、「犯罪者の家族」にしてしまうことの恐ろしさは、自分が耐える云々では済まされないことをしっかり理解してほしい。

私がこの後どうなるかわからないが、少しでも私と同じ状況に遭う人が減れば良いと思い、この記事を残す。

何度もしつこいようだが、私は家族をなくし、破産者となり、前科のある人間になった。お金もなくなった。詐欺で得たお金も被害者への一部弁済に消えた。

この記事を読んで、それでも「やる」という人には、私は何も言えない。私も今の状況になってやっと気づけたのだ。本当にバカなことをした、と。
そして、こうしているうちに亡くなってしまった家族にも、謝罪しようがない地獄に私はいる。

そう、「1回だけでやめよう」そう考えているのであれば、それは難しいこともお伝えしておく。相手はあなたの身分証を持っていて、本籍も控えられていることから、それを元に長く働かせようとする。捕まるまで。彼らにとって何が必要か。それは「労働力」だ。
それにあなたが実勢に大金を目の当たりにした時、「もう少しだけ」と、きっと考えてしまう。

経験した私だからわかる。この記事を読み、悩んでいるあなたは通常の精神状態ではない。お金に困りどうしようもなかったら、とてもシンプルだが、周囲に恥を恐れず相談するべきだ。前科がつくよりずっといい。世の中には、自己破産だって、任意整理だって法的な手段は用意されている。

働きようがないなら、生活保護だってあるではないか。犯罪をして前科者になるよりずっとマシだ。
私は結果的に前科者になり、たくさんの仲間から縁を切られた上で、家も物も、車も金も失い、結局自己破産だ。

必ず捕まる。

捕まらないならば事件としてこれほどまでにニュースにならない。そんな犯罪なら私たち「素人」を使わず、彼らは仲間だけで儲けるだろう。そして、厳罰化されているのは、この犯罪が「悪質」だからだ。被害や精神的なショックも大きいのだ。家族にも被害が言えなかったり、騙されたことを責められて自殺してしまった高齢者もいると聞く。

あなたはどう思う。

どう感じる。

今ならまだ、戻れるんだ。

最後に、私はこのまま刑務所にいくことになり、今後の更新はできないが、少しでも届いてくれることを願う。


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ありがとうございます。少しでも犯罪が減ることを願っています。
特殊詐欺の受け子、出し子として働き、逮捕・多数起訴され、2020年3月6日現在保釈中の身。3月末には判決を受け、実刑確定・再び収監される予定です。 少しでも私のような「同情の余地のない加害者であり、被害者」を減らしたいと考え記事を書きました。 犯罪者のクセに偉そうな点、ご容赦を。