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日本のドラマもようやく転換期?Netflix革命 Part2/3

蜷川実花の新作『Followers』は2020年2月に配信され、都内でよく宣伝されていたのを覚えています。駅構内の巨大な広告、電車内ではキラキラ感で溢れたキャッチ―なCMが流れ、どこに行っても『Followers』の広告が見られ、もう日本のドラマをあまり観ていない私でも配信日を心待ちにするほどでした。

『Followers』は気持ちが沈んだ時、心苦しい時、重くないドラマでも見たいと思った時に是非とも観てみて欲しいです!面白みのない、気の抜けたドラマで溢れているエンタメ業界においては、蜷川実花の新作は爽やかな春風のそよぎのように感じました。非日常感があり、心温まる気楽なドラマでした。

この作品を観て特に気に入ったことは二つあります。先ずは、蜷川さんは監督として映像の細部まで細心の注意を払っていることです。とりわけ、全体の雰囲気と美的感覚。蜷川さんの写真家としての側面―鮮やかな色合いは上手く取り入れられ、部屋のデザイン、選択した家具、食器など、品位は非の打ち所がなかったのです。

もう一つは、蜷川さんが視聴者に伝えようとしたメッセージとビジョンです。全体的にドラマ自体は苦労がなく陽気だったのですが、メッセージ性が強く、私も日本に住んでまだ自分の道を探し続けている外国人の女性として大きなインスピレーションを受け色々考えさせられました。『Followers』を観て、私は将来、日本にいながらとてもカッコよく、自分の欲望と行動力を持ち、強い女性になりたいと強く思いました。『Followers』に描かれた人間模様、特に個々の女性の人物像に感動しました。21世紀の社会における女性の役割とは何か、素晴らしいキャリアを築いている強い女性はこの社会でどのような目で見られているのか。このようなテーマは残念ながら未だに日本においてあまり話されていないのですが、蜷川さんはこの点において素晴らしく「モダンな」女性像を描いたと思いました。人間のセクシュアリティ、自由、個性―そういったテーマについてオープンに話すクリエイターが日本でもっともっと増えていってほしいです。

ただし、「えっ⁈」と思うようなことも結構ありました。海外の作品との酷似性とストーリーの現実味のなさは今作の最大の欠点です。例えば、主演女優の池田エライザ演じる百田なつめの目指している女優の苦労は、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン演じるミアの悔しさと苦しみにとても似ていたし、『Followers』で扱われたもう一つのテーマであるソーシャルメディアの影響もイギリスのドラマ『ブラック・ミラー』を思い出させました。更に、『Sex and The City』との類似点も確認できます。このドラマを観て、「いやーこれどっかで似たようなもの見たことあるなー」とどうしても思ってしまい、都内のロケ地もインスタ映えできる超オシャレな観光スポットしか撮影されなかったのも残念です。もちろん、美しいですが、深みが感じられませんでした。

また、脚本自体にも違和感を覚えました。女性へのエンパワーメント的で、励みになる言葉もあったのですが、ドラマ全体の台詞はかなり薄っぺらくストーリーには現実味がありません。特に最後の9話は監督が完全に諦めた気がしました。百田なつめがクエンティン・タランティーノに素晴らしい印象を残し、ハリウッドからのオーディションの誘いが来て百田なつめは有名人になれたというエンディングは、正直恥ずかしく、浅く、非常に決まりが悪いです。ドラマの最初の3,4話まではかなりよかったのに、クライマックスに近づけば近づくほど、脚本と台詞に力を入れるのを忘れたような印象を受けました。

とは言え、『Followers』は完全な失敗作とは言っていません。確かに、見逃せない不満点があったのは間違いないです。しかし、現代の社会問題に向き合う女性像が描いたクールでモダンな東京のドラマを作りたいという監督の努力は称賛に値します。また、蜷川さんの世界観が好きな方にもこのドラマをお勧めします。ただ、台詞の浅さと特に最後の方のストーリーのナンセンスは大目に見た方がいいと思います(笑)

Part3の記事―『全裸監督』の感想をお楽しみください!


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