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やさしいお絵描き1:四角いモノを見る


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どこで買ったか忘れてしまいましたが、自室デスクに写真のような木の立方体がありました。今回はこれを使って、そもそも我々は普段どのように立体を認識しているか、ということを学んでいきたいと思います。

さて、立方体の特徴といえばどのようなものでしょうか? まず、全ての面が真四角ましかくで、正方形になっています。ですから、すべての角は90°で、向かい合った辺はすべて平行になっていますし、交わる辺は全て直角になっています。常識ですね。なので、これらの知識をもとに立方体を描くと、こんな感じになるかと思います。

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この図はまず、CLIP STUDIOの四角形ツールで完全な正方形を描いてから、ナナメに線を引いて、立方体の「下の辺」を描きました。学生の頃、こんな感じで文字やロゴなんかを立体的にしてノートに落書きしていたという人は多いのではないでしょうか? まあこれでも立体っぽくは見えますし、スーパーファミコンの『シムシティ』の建物は実際こんな感じでしたね。

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ただ、今回作図した立方体は、上の写真の木のキューブと比べるとどうにも変な感じがします。きちんと正方形を描いたというのに、一体どこがいけなかったのでしょうか?

斜めから見た直角は「直角」ではない

実際の写真ではどうなっているのか? というわけで、写真を印刷して色々な部分を測ってみることにします。

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まずはこの緑のライン。立方体ということは全ての面が正方形なわけですから、当然この線はすべて平行になっているはずですし、パッと見そのようになっています。

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しかし、このように三角定規をあててみたところ….

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左右どちらの線も、平行移動させた三角定規とまるで一致しません。つまり、どちらも平行ではないということです。

では、頂点の角度はどうでしょうか? 立方体なのだから、すべての角は直角になっているはずですが….

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分度器を当ててみると、明らかに直角ではありません。辺が平行でなければ角も直角ではない、これらの特徴は明らかに立方体の条件から外れていますが、しかし確かにこれは立方体のように見えます。一体どういうことなのでしょうか?

これはなにが起こっているのかというと、モノを見る角度が変わると、目に見える部分も変化しているのです。

立体資料

「モノを傾けると、見ている面の形が大きく変わる」という現象は、カード状のもので影をつくるときにも現れます。

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モノ自体は同じなのに、ちょっと角度を変えるだけで、影の形は全く違うものになりました。これと同じような現象が、立方体をナナメから見た時には全部の面で起こっています。だから、写真の立方体の面は正方形ではなくなってしまうのです。

そして更に、モノは視点(カメラ)から遠くなると小さく見えるので、直角や平行だったモノの角度が変化して見えます。いわゆる「遠近法」というやつですね。

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同じ立方体を撮った別の写真を見てみましょう。

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これはiPhoneのカメラをかなり近づけて撮ったものです。写真の中央のあたりがカメラに一番近い部分で、画面の端に向かうほどカメラから離れていく格好です。離れていくほど小さく見える、というのが分かりやすいのではないでしょうか。

モノに働く遠近法というのは、モノに近づけば近づくほどより顕著に現れます。逆に、モノから遠ざかるほど、モノに働く遠近法の影響は小さくなっていきます。近い距離から撮った立方体の写真の方がより遠近法を感じられるのは、そのためです。

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たとえば、人工衛星から見た高層ビルは、地上のラインと屋上のラインがほぼ同じように見えます(画像はGoogleMapより)。撮影位置があまりに遠いので、ビルの高さ程度では遠近法が働かないのです。先程の『シムシティ』のようですね。

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さて、ここまでの知識があれば、自分の身の回りの「四角いもの」をより注意深く観察することができるようなるかと思います。空中に定規や分度器を掲げたりしなくても、たとえば鉛筆やピンと張った糸なんかを通して見れば、モノがつくる直線がどのようになっているかを詳しく知ることができます。よく画家が言う「見えたままに描く」というのは、そういうことなのです。

まとめ

・モノを見る角度が変わると、見た目の形が大きく変わる。
・遠近法は、見た目の大きさだけでなく、形にも影響を及ぼす。

→なので、「知っている形」と「見えている形」は一致しないことが多い。それを踏まえてモノを観察すれば、見たままを描くことに役立つ。

次回は、円や球などの丸いもの、あるいは透視図法についてを書こうと思います。気に入ったらサポート機能をよろしくお願いします。

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