「懐」2024年4月21日(日)

・マッチングアプリをマチアプって略すの、まだ全然しっくりきてないな。



・昨日、なんとなくテレビの番組表を見ていたら、『石神秀幸の決断!ラーメン発掘旅』が放送されると知って慌てて録画した。ちょっと前に書いたと思うけど、わたしはこの番組を中学生くらいの頃にかなり好んで見ていた。話し方がバカリズムっぽくていいんだよな。

・石神秀幸が日本全国いろんな場所に行って、その土地についてのラーメン御託を交えつつ、入るラーメン屋を決める(ただし入れるのは1店舗のみ)、という主旨の番組なんだけど、1つのお店にしか入れないという縛り上、店の外からできる限り情報をゲットしていく。店の外にメニューがあるタイプの店ならまだしも、ないタイプの店は出入り口から店内を覗いて情報を獲得していく。その異様なさまがあまりにもおもしろくてめちゃくちゃ好きだ。いま考えれば、許可を得ずにそれをやっていたら店側としてはかなり怖い(外から店内を見回して、分析して、入店しないこともままある)し迷惑なので、事前に許可を取っているに決まっているんだけど、それにしても妙な絵面すぎてすごい好き。

・録画しておいた熊本編もそのテクニックは健在で、店の外から中をがんばって覗きまくっていた。テーブルにあるニンニクチップを発見していた。その店には入らなかった。入店したラーメン屋では、ラーメンの先に中華丼を食べていた。「白菜、にんじんと…あとはなんですかね。それでは、いただきます」と、運ばれてすぐ食べたから熱すぎたらしく、急いで水を飲んでいた。「いや〜ナメてましたね」とか言ってた。その空気感たるや最高。また見れてうれしい。毎週録画に設定しました。



・早起きして、『いなくなくならなくならないで』を読みました。文藝夏号2024の巻頭に収録されている作品。著者の向坂くじらは詩人だそうで、小説としては処女作にあたるらしい。比喩に使われている言葉が新鮮なものばかりでとてもおもしろかった。「コピー機みたいにため息が出た。」とか。いまパラパラとめくって最初に見つかった比喩だったので書いたのですが、もっとおもしろいのがいっぱいありました。比喩の対象に取り合わせる言葉の跳躍感と納得感が勘案されて、いい比喩かどうかが決まると思うんだけど、これはこの人の書いたものじゃないと読めないな、がたくさんあるとそれだけで読んだ意味があったと感じられてうれしい。

勤務時間はもっぱら、並んで机につく人たちのちょうど首の高さを横切る巨大なチェーンソーのことを、飲み会ではもっぱら窓を割ってなだれこむゾンビのことを考えていた。

『いなくなくならなくならないで』文藝夏号p58

・スプラッタものの映画が好きとかいう設定を作中で提示することはまったくなかったのに、急にバイオレンスホラーな文章が出てきておもしろかった。死の雰囲気は作品全体に漂ってはいた。

・メインは共依存の話だと思うんだけど、軽々しく人に助け船を出してしまうと、関係性を切るのがとてつもなく大変になることも同時に描かれている。面倒をみる、ということに付きまとう重さ。覚悟のいらない関係性など本当はないし、みんなそのことに気づいているけど、直接それを確認しあったりはなかなかしない。どうでもいい関係を維持できるほどの甲斐性はないし。

・最近は軽くて気安い関係性にやたら高い価値が与えられている気もするんだけど、たとえばそこにも"踏み込みすぎない"みたいな暗黙のルールがあったりして、それを続ける覚悟または打破する覚悟が多くの場合に必要になるはずだ。

・わたしがそしあのに感じているような、最高の関係性じゃん!というような感覚を、対象は違えどみんな誰かしらには思っているような気はしていて、わたしたちがそのように他者の関係性を勝手に消費するとき、そこにあるはずの覚悟は見て見ぬふりをしている。そのある種の甘えを刺す小説だった。


・最後は突然終わってしまうので、時子と朝日の2人がどうなってしまったのかは読み手に委ねられている。わたしは、円満ではないけど歪な形で丸く収まり続けるんじゃないか、と思った。めちゃくちゃ不穏だったけど、なんとなく分裂しそうな感じじゃない気がして。みなさんも読んでみてください!



・雨の中、本を買ったり服を買ったり靴を買ったり大暴れした。さぞうらやましいことでしょう…。

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