【小説】帰路
今日も仕事を終えた。何度目かわからないため息をついて、マグカップにわずかばかり残ったコーヒーを飲み干した。
終えたというよりは、区切りをつけたと言った方がいいだろう。けっして終わることのない無限の紐を1日ずつ切っていくような日々。
職場を後にして駅に向かって歩く。何にも目を止めることなく歩く。
何色かもわからない髪をした若者が数人、大きな声で笑っている。なにを喋っているかもわからない。
若者たちを自然な距離で避けながら駅までの道を歩く。川の流れに身を委ね漂うゴミのように歩く。
アスファルトが秒針のように時を刻んでいる音が頭に響く。
なにに向かって歩いているのか。なぜ毎日歩いているのか。答えが見つからないことはわかっている。
何かの罰のようだな。そう思いながら今日も駅の改札を抜けた。