最終出社日
今、私はゆらゆらと電車に揺られながら東京駅へと向かっている。
去年までとそれほど変わらないような人混みを通り抜け、座席が埋まった箱に乗り込む。
その箱は高速道路の制限速度程度の速さで進みながら数分ごとに深呼吸することで、人々の往来を手助けしている。
2月から長らくリモート勤務だったため、片手の指で収まるほどの回数しか出社していない。
そのため、この出社はおよそ2ヶ月ぶりのものだ。
しかし、今回の出社はこれまでのものと全く異なる。
今日は、私の最終出社日なのである。
普段と違う目的を持っていたとしても、電車に同乗するほかの人の日常に変化を生み出すことはない。
自身の人生と交わらないほかの人にも人生があって、などと少し思いを馳せながら、私はこう考える。
人生は自分でしか変えられず、自分のために生きるしかない。
こうして自分を正当化しながら、次の電車に乗り込む。
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