『生きる LIVING』

『生きる LIVING』(イギリス 2022)

泣きそうになりました。物語にではなく、カズオ・イシグロはじめ、スタッフの黒澤明リスペクトに。控えめなリメイクにそれを感じました。
アキラ・クロサワは偉大な監督なんだと確証。

妙に印象に残ったのは、日本とイギリスの平均的役人像を表した帽子です。主人公が愛用していたものを取り替えてイメチェンするんですが、志村喬のリボン付きの帽子はちょっと滑稽。ビル・ナイの中折れ帽はかっこいい。志村は無骨で質素。ビル・ナイはあくまでも紳士であろうとします。両国の気質が表れていておもしろいと思いました。

過去を悔いるウィリアムズ。
役所の仕事は自分に合わないと転職した自由奔放なミス・ハリスを見て、
「私がなりたかったのは紳士だ。だが、だんだん蝕まれてしまった。長い年限をかけて。だから気がつかなかった。一日でも彼女のように生きられたら…」

夕暮れ時、公園の子供たちを見て。
「母親が呼びに来ても、いやだもっとやりたいことがあるから帰らないという子はいい。自分は何もせず座って母親を待っているだけの子だった」
着任したばかりの最も若い部下のピーターに遺したメッセージ。
「心が麻痺してしまったら、あの遊び場を思い出して欲しい。」

『生きる』143分
『生きる LIVING』103分
40分の差は、通夜振る舞いでのあれやこれやの人間模様で、故人を偲ぶと称しながら故人そっちのけでの無礼講、酔いに任せて本音をぶつけ合うというのは、日本人特有? とにかくイギリス人にはわかりますまい。


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