『家庭用安心坑夫』 ホラー?コメディ?

『家庭用安心坑夫』(小砂川チト 講談社 2022)
前回の芥川賞の選評を読んだとき、受賞作よりおもしろそうと直感したのがこの本でした。
ホラーです。コメディかもしれません。30年以上主体性を持たずに生きてきた女性が突然自分の意思を持つと、奇々怪々で突飛な行動の連続になるという、不気味で滑稽な物語でした。
娘の父という立場で読むとさらに怖い。母子家庭で育った主人公の小波の父親は、廃坑テーマパークの坑道のマネキン人形です。母親に子どものころから繰り返しそう聞かされてきました。
そのマネキン人形が突然、東京に住む小波の前に姿を現すという・・・。それも日本橋三越とか、渋谷の交差点に。
そのただ立っているだけの父親の無機質さが、怖いんですよ。特に私のような存在感のない父親には。
物語への導入が巧みです。今村夏子さん、村田沙耶香さんに続いてほしい新人です。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000368391



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